社内Wikiや共有フォルダ、よくある質問の一覧を作った。最初はみんなが書き込んでいたのに、いつのまにか更新されなくなり、誰も見なくなった。ナレッジマネジメント(社内の知識や経験を共有して、仕事に生かす取り組み)で、こうした経験をお持ちの会社は多いと思います。
前にも同じようなクレームってあったかな…
似た対応が3件あります。要点をまとめますね
当社がご相談を受ける中でも、「ナレッジ共有は何度試しても続かなかった」「ビジネスチャットに移ったが、忙しくて情報がたまらない」というお話をよく伺います。この記事では、ナレッジマネジメントにAIを組み合わせて、ためた知識を仕事で使える形にする方法を説明します。
この記事のポイント
- ナレッジマネジメントは、知識をためる・探す・使う・直すの4つの段階が回って、初めて仕事の役に立つ
- AIを組み合わせると、ためる作業を人の手から外し、探した結果を要点にまとめ、仕事の画面の中で使えるようになる
- 誰が何を見られるかと、記録しないものを先に決めておくと、社員も安心して使える
ナレッジマネジメントにAIを組み合わせると、4つの段階が回り出す
ナレッジマネジメントにAIを組み合わせるときは、知識をためる・探す・使う・直すの4つの段階で、人の手間が止まっているところをAIに任せることから始めます。ツールを入れ替えるだけでは、同じところで止まります。
たとえば、ためる段階では、会議やメールの記録をAIが自動で整理します。探す段階では、検索結果を並べる代わりに、AIが要点をまとめて返します。人が手を動かさなくても知識がたまり、聞けばすぐに使える形で返ってくる。この状態になると、ナレッジ共有は続くようになります。
これまでのナレッジマネジメントが止まりやすい理由
まず、よく使われてきたツールと、止まりやすい理由を整理します。
| ツール | よくある使い方 | 止まりやすい理由 |
|---|---|---|
| 社内Wiki | 手順やノウハウを記事として書く | 書く人が忙しく、更新が止まる |
| 共有フォルダ | 資料をフォルダに分けて置く | どこに何があるか分からず、版も増えていく |
| よくある質問の一覧 | よく聞かれる質問と答えをまとめる | 新しい質問が足されず、答えが古くなる |
| ビジネスチャット | やりとりの中で情報を共有する | 流れていってしまい、あとから探せない |
| 日報 | その日の仕事や気づきを書く | 書くこと自体が負担になり、中身が薄くなる |
どのツールにも共通しているのは、ためるのも、探すのも、直すのも、人の手作業に頼っていることです。事業部制のBtoB企業とのご相談では、共有サーバーもシステムも、いつのまにか使われなくなっていました。健康食品の通販会社とのご相談でも、ビジネスチャットに移ったものの、ためる場所があるだけでは忙しくてたまらない、というお話でした。
つまり、続かなかったのは、社員のやる気や会社のせいではありません。4つの段階のどこかで、人の手間が止まっていたことが原因です。
AIで変わる、ナレッジマネジメントの4つの段階
AIを組み合わせると、4つの段階はそれぞれ次のように変わります。
ナレッジマネジメントの4つの段階と、AIが受け持つこと
- ためる会議の録音・メール・チャットから、決まったことや経緯をAIが整理して残す
- 探す質問すると、関係する記録の要点と、元の記録へのリンクが返ってくる
- 使う企画書や返信の下書きを作るときに、たまった知識が自動で使われる
- 直す人が直した内容を、会社のルールとして1件ずつ追加する
いちばん大きく変わるのは、ためる段階です。健康食品の通販会社へのご提案では、ためる作業そのものをAIに任せ、会議・チャット・日々のやりとりを夜のうちに整理する形を考えました。会議の前には前回の決定と宿題が配られ、欠席した人も短い要点を読めば話に追いつけます。
普段の記録から、知識がたまる流れ(イメージ)
- 会議の録音
- お客さまとのメール
- 社内のチャット
- 決まったことと、その理由
- 担当と期限
- 似た案件で使える対応の例
探す段階では、見つかった記録を原文のまま並べても、経験の浅い社員には読み解けないことがあります。要点を短くまとめて返し、必要なときは元の記録に戻れるようにしておくと、ベテランに聞き直す回数が減ります。答えの根拠になった記録が分かるので、内容を確かめてから使えます。
使う段階も変わります。イベント企画の会社へのご提案では、企画書を作るだけで、案件・提案の内容・担当者が自動で残る形にしました。知識を残すための入力を別に増やさず、普段の仕事の成果物から記録がたまるようにすると、現場の負担は増えません。社員が使うのは仕事ごとの専用画面で、覚えるのはボタンの位置だけです。
直す段階では、AIの答えを人が直したら、その内容を会社のルールとして追加します。判断の理由を仕事の中で残していく方法は、次の記事で詳しく説明しています。
詳しく解説した記事コラム暗黙知を形式知にするには?ベテランの経験を、仕事をしながら残す方法暗黙知を形式知にするには、普段の仕事の記録や、判断のたびのひと言から少しずつ残すことが大切です。暗黙知と形式知の違い、暗…誰が何を見られるかを、先に決める
普段の記録から知識がたまるようになると、社員から「自分の仕事を丸裸にされるのではないか」という声が出ることがあります。この不安は、誰が何を見られるかを会社として先に決めておけば、小さくできます。
| 見る人 | 見られる範囲 | 見られないもの |
|---|---|---|
| 本人 | 自分の記録すべて | — |
| 上長 | 部下の仕事の集計した数字 | 一人ひとりのやりとりの中身 |
| 人事 | 部門単位の集計 | 個人ごとの記録 |
| 全員 | 仕事で使う手順・ルール・過去の対応例 | 私用のやりとり(そもそも記録しない) |
表は、事業部制のBtoB企業へのご提案でお示しした考え方をもとにした例です。私用のやりとりは最初から記録しないことも、あわせて決めました。「ここから先は見ない」を最初に社員へ伝えておくと、監視の道具と受け取られずに済みます。
部署や役職ごとに見られる範囲を分ければ、権限のない人の質問に、その人が見られない記録を使って答えることもありません。
ナレッジが使われているかを確かめる
ナレッジマネジメントの効果は、ためた知識が仕事で使われたかどうかで確かめます。毎月、次のような点を見ておくと、どこで止まりかけているかが早く分かります。
毎月確かめたいこと
- AIへの質問は、どの部署から、どのくらい来ているか
- 答えられなかった質問は何か。足りない記録や資料はどれか
- 人がAIの答えを直した回数と、その内容をルールに追加したか
- 知識を使った仕事で、作業時間はどれだけ減ったか
- 空いた時間を、何に使ったか
当社では、毎月の報告で「今月、会社に残ったもの」を、動いている仕組み・データ・文書・知識・来月の予定に分けてお伝えしています。何が会社に残ったかを毎月見える形にすると、取り組みが形だけになるのを防げます。答えられなかった質問は、次にためる記録や整える資料の候補になります。
一部の社員から始めて、広げていく
ナレッジマネジメントを立て直すときは、全社で一斉に始めないことが大切です。事業部制のBtoB企業へのご提案でも、まず前向きな数人から始め、楽になった様子を見た人が手を挙げてから広げる進め方をお示ししました。
ナレッジ共有を広げていく順番
- はじめ前向きな数人で使う知識がたまる仕組みを、少人数の仕事で動かしてみる
- 効果が出たら周りの人が手を挙げる楽になった様子を見て、使いたい人が加わる
- 部署に広げる部署の仕事で使うたまった記録を、部署のよくある質問や下書きに使う
- ほかの仕事へ別の仕事にも使う同じ知識を、報告書づくりや問い合わせ対応にも使い始める
当社が構築した仕組みでは、素材メーカーで、担当者のPCに散らばっていた開発の記録と報告書を1か所に集め、営業も開発も質問すればその場で答えが返る形にしました。月257時間の削減を見込んでいます。当社のセミナー「Claude Codeで組織はどう変わる?AI時代の組織設計」でも、最初に社員が触りやすい仕組みを作っておくと、使うほど会社の知識がたまっていくとお伝えしました。
社員がAIを自然に使うようになるまでの進め方は、次の記事でまとめています。
あわせて読みたいコラム社内でAIが定着しない理由と、社員が自然に使う仕組みのつくり方AIツールを入れても社内で使われないのは、使う場面が仕事の流れの外にあるからです。定着しない5つの理由と、社員がAIを意…マスターブレインを活用したナレッジマネジメント
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
書類・メール・チャット・会議の記録は、普段どおり仕事をするだけで集まり、「どの案件の、誰との、いつの話か」を付けて整理されます。社員は仕事ごとの専用画面から使い、質問すれば要点と元の記録が返ってきます。人が直したことは「ルール帳」に1行ずつ追加され、部署や役職ごとに見られる範囲も分けられます。仕組みの全体像はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
続かなかったナレッジ共有、AIでもう一度始めませんか?
マスターブレインは、会社の資料・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずは資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- 資料が整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
- 製造業の「見えない製造ライン」をカイゼンする2026年9月
- AIに「会社の脳」を持たせるには?2026年8月
- Claude Codeで組織はどう変わる?AI時代の組織設計2026年7月
- 第21回 CONVERSION SUMMITに登壇2026年6月
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