2026年10月24日、AIエージェントを作るための開発の道具を出しているLangChain社が、自社のブログで、社内で使っているAIエージェントの作り方を公開しました。営業・開発・マーケティングの3つのエージェントに共通する「5つの部品」をまとめた記事です。
社内のチャットツールにAIを置いて、社員みんなで使えるようにしたいと考えている会社にも関わる話です。1人で使うAIと違い、みんなで使うAIには「誰の権限で動くか」「誰の話を覚えるか」を決める必要があります。この記事では、LangChain社が公開した5つの部品、権限の2つの持たせ方、会社で使う前に決めることを説明します。
このメール、私の名前で送ってくれるの?
メールの下書きは、個別のやりとりで作りますね
この記事のポイント
- LangChain社の社内エージェント3つには、共通する5つの部品があった(いつものチャットで使う・誰の依頼かを知る・覚える範囲を分ける・作業場所を隔離する・決まった時刻や出来事をきっかけに動く)
- エージェントの権限の持たせ方は2つ。頼んだ人の権限で動くか、エージェント自身の決まったIDで動くかを、つなぐ道具ごとに分けている
- 社内でAIエージェントを共有する前に、道具ごとの権限、みんなの前で使わせない機能、覚えさせる範囲を決めておく
みんなで使うAIエージェントには、権限と記憶の線引きが要る
LangChain社によると、社内のエージェントは営業・開発・マーケティングの仕事の進め方を大きく変えました。ただし、正しく動かすのは簡単ではなく、多くの人で使うときに起きる問題の解決に時間をかけたといいます。その結果、どのチームのエージェントも、同じ部品を使う形になりました。
中でもいちばん難しかったのは、エージェントが「誰として」動くかでした。同社は、頼んだ人の代わりに動く道具と、エージェント自身の決まったIDで動く道具を、エージェントごとに分けています。エージェントが覚える範囲も、そのエージェントを使う全員に共通の記憶と、1人ずつの記憶の2つに分けています。
公開された内容:3つの社内エージェントと5つの部品
LangChain社が紹介した社内エージェントは、次の3つです。3つとも同じ作り方で作られていて、同社はこれを、会社でエージェントを作るときの一般的な作り方だと考えています。
LangChain社の3つの社内エージェント(同社のブログから)
- GTM Agent(営業・マーケティング)メールや有望な見込み客に反応し、毎日の要点をまとめて送る。取引先についての質問にも答える
- OpenSWE(開発)プログラムの変更案を下書きし、すべての変更案を確かめる
- Content Studio(マーケティング)ブログ・画像・プレゼン資料・動画の下書きを、自社の書き方で作る
3つに共通する5つの部品は、次のとおりです。
社内エージェントに共通する5つの部品(同社のブログから)
- いつもの場所で使う同社ではSlack。名前を呼ぶか、1対1で話しかける
- 誰の依頼かを知る道具ごとに、頼んだ人の権限か、決まったIDかを分ける
- 覚える範囲を分ける全員に共通の記憶と、1人ずつの記憶
- 隔離した場所で作業するプログラムは「サンドボックス」と呼ぶ隔離した場所で動かし、そこから外のサービスにもつなぐ
- 予定や出来事で動く実行の多くは、人が呼ばなくても予定や出来事をきっかけに動く
Slackのチャンネルで使うと、ほかの人の使い方が見えるという利点もあるといいます。一方で、送る予定のメールがたくさんたまったときの確認は、Slackのメッセージでは追いにくいため、専用の画面を作りました。
3つのエージェントは、同社のサービス「Managed Deep Agents」の上で動いています。ブログで紹介された部品を、このサービスが用意しています。
詳しく解説した記事コラムAIエージェントとは?チャット型AIとの違いと、業務での使いどころAIエージェントは、目標を伝えると、手順を考えて道具を使い、仕事を最後まで進めるAIです。チャット型AIとの違い、業務で…これまでとの違い:頼んだ人の権限か、決まったIDか
1人で使うなら、AIが使うアカウントはその人のものだけで足ります。みんなで使うエージェントでは、同じエージェントにいろいろな人が頼むので、どのアカウントで動くかを決める必要があります。LangChain社は、業界の主なやり方は2つだとして、道具ごとに使い分けています。
| 比べる項目 | 頼んだ人の代わりに動く | エージェント自身の決まったIDで動く |
|---|---|---|
| どのアカウントで動くか | 頼んだ人のアカウント。1人ずつ自分のアカウントで許可する | エージェント用の1つのアカウント。頼んだ人が誰でも同じ |
| LangChain社での例 | 開発のエージェントに頼むと、頼んだ人の名前で変更案を出す。営業のエージェントのメール、マーケティングのエージェントのNotion(文書の共有サービス) | 開発のエージェントが裏で変更案を確かめるとき。営業のエージェントのSalesforce(顧客管理)。マーケティングのエージェントの会社のX(旧Twitter) |
| 向いている使い方(公式の説明書から) | その人だけが見られる文書を探す、その人の名前で送る | 全員に同じことをさせる。共有の知識の置き場所を読む、1つのチャンネルに投稿する |
| LangChain社が決めた制限 | 営業のエージェントで、メールのように本人として動く道具は、1対1のやりとりでしか使えない。みんなのチャンネルでは使えない | 会社のX(旧Twitter)への投稿などは、許可した人しか頼めない。ほかの人は、読むことや下書きまでの場合がある |
覚える範囲にも同じ考え方があります。同社のサービスの説明書では、記憶を「全員に共通の記憶」と「1人ずつの記憶」の2つに分けています。記憶は初めは使わない設定で、使うと決めた記憶ごとに、使える場所が次のように決まっています(Slackで頼んだ場合)。
| どこで頼んだか | 全員に共通の記憶 | 1人ずつの記憶 |
|---|---|---|
| Slackの1対1のやりとり | 使える | 使える |
| Slackのチャンネル、複数人のやりとり | 使える | 使えない |
説明書によると、個人の記憶が、みんなの見る会話に出ないようにするためです。必要なら設定で変えられますが、そのままでは、みんなの前に個人の記憶を出さない作りになっています。
プログラムを動かす隔離した場所についても、説明書では、外のサービスにつなぐための鍵を、隔離した場所の外で付け足す仕組みを説明しています。プログラムの中に鍵を書かずに済みます。
仕事での使いどころと、使う前に確かめること
以下は説明のための例です。社内のチャットツールに、総務の質問に答えるエージェントを置くとします。社内規程の置き場所は、エージェント用の決まったIDで、読むだけの権限にしておきます。社員のメールを使う下書きは、1対1のやりとりの中だけで、本人の権限で作らせます。
こうしておくと、みんなが見るチャンネルでは誰でも規程について聞けて、個人のメールの中身はチャンネルに出ません。
社内でAIエージェントを共有する前に決めること
- つなぐ道具ごとに、頼んだ人の権限で動かすか、エージェント用のIDで動かすか
- エージェント用のIDに、どこまでの権限を渡すか(読むだけか、書き込みもするか)
- みんなのチャンネルでは使わせない機能(メールを送る、個人の文書を読む など)
- 会社として投稿・送信する操作を、誰なら頼めるか
- 全員に共通の記憶に、何を覚えさせてよいか。個人の記憶を、みんなの会話に出さない設定になっているか
- 決まった時刻に動く仕事を、誰が設定し、誰が止められるか
LangChain社のエージェントは、同社の開発者向けのサービスで作られています。ほかのAI製品で社内のエージェントを作るときも、同じことを決められるかどうかは、それぞれの製品の公式ページで確かめてください。
あわせて読みたいコラム生成AIのセキュリティ対策|情報漏洩を防ぐ設定と、社内で決めること生成AIのセキュリティ対策として、入力してよい情報の線引き、法人向け契約で確かめる3つのこと(学習・保存期間・管理者機能…当社の見解:エージェントの権限は、社員の権限と同じように設計する
当社も、AIエージェントの安全はAIの賢さより、AIが扱う範囲の設計で決まると考えています。食品メーカーの情報システム部門へのご提案では、新入社員のアカウント発行をAIで進める仕組みを考えました。1人の担当者に、全社員分のアカウント発行が集中していたためです。
ご提案した仕組みでは、AIがログインに使う入口を、社員が使うシングルサインオン(1回のログインで複数のサービスに入れる仕組み)とは別にします。AIは管理画面を触らず、実行の計画を作るだけです。実行は、あらかじめ許可した操作だけをプログラムが行い、削除や外部への共有は別に人が承認します。
マスターブレインでも、部署・役職ごとに見られる範囲を分けています。当社のセミナー『Claude Codeで組織はどう変わる?』でも、誰が何を見られるかは業務のルールと一緒に、最初から設計に入れるとお伝えしました。新しいエージェントの道具を選ぶ前に、社内の誰に何を見せてよいかを書き出しておくことをおすすめします。
最新の内容は、LangChain社の公式ページでご確認ください。

マスターブレインを活用した、AIに見せる範囲の決め方
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
マスターブレインの「権限・ルール帳・更新」の層では、部署・役割に応じて参照できる範囲と、更新・承認の手順を決めます。権限のない人が質問しても、閲覧できないデータの内容は回答に使われない構成にし、送信・決裁は人が行います。誰に何を見せるかは、御社と一緒に決めます。仕組みの全体はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
そのAIエージェント、誰の権限で動かしますか?
マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- データが整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
会社の情報・知識・判断基準を活用するマスターブレインの設計と、業務別の活用方法を解説しています。個別の実装範囲は、扱う情報・既存環境・確認体制に合わせて検討します。
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