AIによる業務自動化

AI導入はどこから始める?自社業務の棚卸しで最初の1業務を選ぶ手順

自社業務のどこにAIを導入すべきか分からないときは、業務の棚卸しから始めます。仕事を書き出し、時間・回数・困りごとを測って最初の1業務を選ぶ手順を、棚卸し表の例とあわせて説明します。

AI導入はどこから始める?自社業務の棚卸しで最初の1業務を選ぶ手順

AIを使って仕事を楽にしたい。でも、自社の業務のどこにAIを入れればよいのかが分からない。ご相談の中でも、自社の業務が見えておらず、どこから始めるか分からないという声をよく伺います。

AIを入れるなら、どの仕事からがいいですか?

まず各部署の仕事を書き出して、時間を数えよう

社内の仕事を一覧にすると、どこにAIを入れるかを決めやすくなります。

始める仕事が決まらないのは、多くの場合、社内の仕事が一覧になっていないためです。どの仕事にどれだけ時間がかかっているかが見えないと、選びようがありません。

この記事では、業務の棚卸しで、最初にAIを入れる1業務を選ぶ手順を説明します。業務の棚卸しとは、社内の仕事を書き出し、それぞれの時間と困りごとを確かめることです。棚卸し表の例と、棚卸しをAIに手伝わせる方法もまとめました。

この記事のポイント

  • 自社業務のどこにAIを入れるかは、社内の仕事を書き出し、時間・回数・困りごとを測ってから決める
  • 棚卸し表は部署ごとに1行に1つの仕事を書いて作り、月の合計時間が大きく、困りごとがはっきりした仕事を最初の1業務にする
  • 最初の1業務で空いた時間を数字で確かめてから、棚卸し表に残った仕事の中から次の業務を選ぶ

自社業務のどこにAIを入れるかは、業務の棚卸しで決める

AIを入れる場所が分からないときは、業務を棚卸しします。手順は仕事を書き出す・時間と回数と困りごとを測る・最初の1業務を選ぶの3つです。AIに向いた仕事を探す前に、社内にどんな仕事があり、どこに時間がかかっているかを一覧にします。

一覧ができると、月の合計時間が大きく、困りごとがはっきりしている仕事が見えてきます。その中から1つだけ選び、効果を数字で確かめてから次の仕事に広げます。当社でも、いちばん重い仕事を1つ選んで始め、削減できた時間を確かめてから次の業務へ広げています。

業務の棚卸しの3つの手順と、棚卸し表の例

3つの手順で何をして、何が出来上がるかをまとめました。

業務の棚卸しの3つの手順

  1. 書き出す部署ごとに、毎日・毎週・毎月している仕事を1行ずつ書く。社内の仕事の一覧ができる
  2. 測る仕事ごとに、月の回数・1回の時間・困りごとを書き込む。どの仕事に時間がかかっているかが分かる
  3. 選ぶ月の合計時間が大きく、困りごとがはっきりした仕事を1つ選ぶ。最初にAIを入れる仕事が決まる

書き出した結果は、1枚の表にまとめます。営業・管理・総務・経営の仕事を棚卸しすると、たとえば次のような表になります。

部署仕事回数月の合計時間困りごと使う材料
営業見積書を作る相談のたび(毎日)大条件の判断を課長に聞かないと進まない過去の見積書、単価表
管理請求書を作る毎月の月末大受注の記録から書き写し、合っているかの確認にも時間がかかる受注の記録、作業の実績
総務社内からの質問に答える毎日中同じ質問に何度も答える。担当者が休むと止まる社内規程、過去の回答
経営部署ごとの数字を集める毎月中部署ごとのExcelを集めて、1つの表に書き写す売上と受注のデータ
総務備品を発注する毎月小特になし発注の記録
表の例は、棚卸しの進め方を説明するための例です。

特定のお客さまの業務ではありません。実際の表には、月の合計時間を「〇時間」と数字で書きます。この例では、分かりやすくするために大・中・小で示しています。

この表の例では、見積書づくりと請求書づくりが最初の候補になります。どちらも月の合計時間が大きく、困りごとがはっきりしています。

1行に書くのは、「見積書を作る」「請求書を作る」のように、出来上がるものがある仕事です。細かい作業に分けるのは、最初の1業務を選んだ後で十分です。

手順1:部署ごとに、社内の仕事を書き出す

最初の手順では、部署ごとに仕事を書き出します。経営者や推進担当が一人で書くと、自分に見えている仕事しか出てきません。実際にその仕事をしている担当者に、毎日・毎週・毎月していることを書いてもらいます。

商品の卸売の会社では、見積もりを作れる人が一部に限られていました。見積もりや定型の事務をAIで減らす仕組みのご提案では、部署ごとの聞き取り用紙を先にお渡しする進め方をお示ししました。

各部署で、毎日・毎月している仕事を用紙に書き出していただく形です。用紙を先に配っておくと、各部署の仕事が一度に集まり、棚卸しが早く進みます。

次のような仕事は、書き出すときに漏れやすいので注意します。

書き出すときに漏れやすい仕事

  • メールの返信や電話の取り次ぎのように、仕事の合間にしている作業
  • 資料を探す、詳しい人に聞く、返事を待つといった時間
  • 月末や年度末など、決まった時期にだけ集中する仕事
  • 社長やベテランだけがしていて、ほかの人は中身を知らない仕事
  • 同じ内容を、別のシステムやExcelに書き写す作業

探す・聞く・待つ時間は一覧に出てきにくいのに、合わせると大きな時間になっている場合があります。担当者には「その仕事で、手が止まるのはどんなときですか」と聞くと、書き出してもらいやすくなります。

手順2:時間・回数・困りごとを測る

書き出した仕事ごとに、月の回数と1回にかかる時間を書き込みます。月の合計時間は「1回の時間 × 月の回数」で出します。1回は短くても回数が多い仕事は、月の合計で見ると大きな時間になります。

測る項目書くこと測り方の例
回数月に何回、その仕事をするか見積書なら、先月作った見積書の数を数える
1回の時間始めてから終わるまでの時間。探す・待つ時間も含める直近の見積書を3件選び、1件ずつ始めと終わりの時刻を書き留める
困りごと止まる・聞く・待つ場面や、ミスや差し戻しが起きる場面「課長に聞かないと進まない」「月末に残業が増える」のように、担当者の言葉で書く

時間をすぐに測れない仕事は、担当者に「1回におよそ何分かかるか」を聞いて、仮の数字を置きます。あとで測った数字に置き換えれば十分です。すべての仕事を月の合計時間で並べると、どこに時間がかかっているかを比べられます。

困りごとも、時間と同じくらい大切です。担当者が休むと止まる仕事や、ミスがお客さまに迷惑をかける仕事は、時間が短くても早めに手を打ちます。

最初の1業務は、どの仕事に月何時間かかっているかを数字で確かめてから決めます。当社のセミナー「Claude Codeで組織はどう変わる?AI時代の組織設計」でも、業務を棚卸しし、月何時間かを数字で出してから1本目を選ぶ進め方をお伝えしました。測った数字は、AIを入れた後に効果を比べる元にもなります。

あわせて読みたいコラムAI導入の費用対効果の考え方|時間・品質・機会の3つで測るAI導入の費用対効果は、空いた時間だけでなく、品質と、増やせる仕事(機会)の3つで測ります。効果の測り方、試算を見込みと…

手順3:最初にAIを入れる1業務を選ぶ

棚卸し表ができたら、月の合計時間が大きい順に並べ替えます。上から順に次の3つを確かめて、最初の1業務を選びます。

最初の1業務を選ぶときに確かめる3つのこと

  • 月の合計時間が大きい空く時間が大きいほど、効果を数字で示しやすい
  • 困りごとがはっきりしている「課長に聞かないと進まない」のように、どこで止まるかを担当者が説明できる
  • AIが使う材料がある過去の書類や記録、決まった手順がある。材料がない仕事は、先に記録を残すところから始める

候補が複数あっても、最初は1業務だけに絞ると、作業の範囲が小さく、効果も早く確かめられます。候補がAIに向いているかを確かめる4つの条件は、次の記事で説明しています。

詳しく解説した記事コラムAIで業務効率化できる仕事とは?向いている仕事・向いていない仕事の見分け方AIで業務効率化できるのは、件数が多く、使うデータがあり、出来上がりの形が決まっていて、最後に人が確かめられる仕事です。…

近いうちにやり方そのものが変わる仕事は、候補から外すか後回しにします。

数年後に人事制度の刷新を控えた人事部門では、入社手続きの書類の郵送と手入力が負担でした。入社手続きの書類の確認と書き写しを減らす仕組みのご提案では、仕事を2つに分けて考えました。「制度が変わっても残る仕事」と「制度と一緒に変わる仕事」です。

制度が変わっても残る仕事から選べば、今取り組んでも無駄になりません。

当社の構築実績でも、どの会社もいちばん重い仕事を1つ選んで始めています。建設資材のレンタルでは、担当者が手作業で拾っていた図面の数量をAIが拾い、見積の形まで出します。フランチャイズ本部では、店舗ごとの数字を人手で集める作業を、店舗別の分析画面でなくしました。

いちばん重い仕事1つから始めた構築実績

月341時間削減見込み建設資材のレンタル:図面から数量を拾い、見積の形まで出す
月135時間削減見込みフランチャイズ本部:店舗別の分析画面で、数字を集める作業をなくす

最初の1業務が決まったら、空いた時間の使い道も決めておきます。当社では支援を始める前に、空いた時間を営業や提案に回すのか、ほかの仕事に使うのかを、お客さまと一緒に決めます。成果をどの数字(KPI)で確かめるかも、このときに決めます。

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棚卸しそのものをAIに手伝わせる

忙しい担当者ほど、仕事を書き出す時間が取れません。書き出した内容も、本人が覚えている範囲に限られます。そこで、普段の仕事の記録から、棚卸しの下書きをAIに作らせる方法もあります。

クレーム対応に時間を取られ、新しいお客さまの開拓に手が回らない会社がありました。この会社へのご提案では、日報を書かなくても1日の仕事の流れが記録に残る形を考えました。その記録から人ごとの時間の使い方を集計し、AIが仕事ごとに仕分けの案を出す流れです。

普段の記録から、棚卸しの下書きを作る(イメージ)

使う情報
  • 業務メールのやりとり
  • PCでの作業の記録
AIが集計仕事ごとに時間をまとめ、仕分けの案を出す
出てくるもの
  • 人ごとの時間の使い方
  • 仕事ごとの仕分けの案(AIに任せられそう・ほかの人に渡せそう・この人にしかできない)

AIが出すのは、仕分けの案までです。案の一つひとつに○か×を付けて決めるのは、責任者です。仕事をよく知る人が確かめてから、最初の1業務を選びます。

記録を集めるときは、誰が何を見られるかを先に決めます。このご提案では、本人は自分の記録をすべて、上長は集計した数字だけを見られる形をお示ししました。私用のやりとりは、記録の対象から外します。

見る範囲を最初に決めておくと、「監視されるのでは」という社員の不安を減らせます。

選んだ1業務を進めた後も、棚卸し表を使う

棚卸し表は、最初の1業務を選んだ後も使います。1つ目の業務で空いた時間を数字で確かめたら、表に残った候補から次の業務を選びます。表に残った仕事が、そのまま次の候補の一覧になります。

思いつきで選んだ場合と、棚卸し表から選んだ場合

思いつきで選んだ場合
  • 目に付いた仕事や、声の大きい部署の仕事から始める
  • 効果を聞かれても、導入前と比べる数字がない
  • 1つ目が終わった後、次に何をするかがまた決まらない
棚卸し表から選んだ場合
  • 月の合計時間が大きい仕事から始める
  • 棚卸しで測った時間と、導入後の時間を比べられる
  • 表に残った仕事が、次の候補の一覧になる

選んだ1業務は、次に工程ごとに分けて、どこをAIに任せ、どこで人が確かめるかを決めます。仕事を入力・判断・出力・確認の4つの工程に分ける方法は、次の記事で説明しています。

あわせて読みたいコラムAIエージェントに任せる工程の切り出し方|入力・判断・出力・確認で業務を分けるAIエージェントに仕事を任せるときの、業務フローの分け方を説明します。1つの仕事を入力・判断・出力・確認の4つの工程に分…

2つ目以降の業務では、1つ目の業務で集めた記録やルールを使える場合があります。当社の導入支援では、困っている業務と普段使っているデータを伺い、最初に取り組む業務を一緒に選ぶところから始めます。

マスターブレインを活用した業務の棚卸しと最初の1業務

マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。

棚卸しで選んだ最初の1業務について、使う書類・メール・業務データを1か所に集め、その業務の専用画面を当社が設計・構築します。1つ目の業務で集めた情報とルール帳は、2つ目の業務でも使えます。結果を数字で確かめながら、棚卸し表に残った仕事へ広げていきます(マスターブレインの仕組み)。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

どの仕事から始めるか、棚卸しから一緒に決めませんか?

マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。

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  • 仕組みと、5つの層の役割
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これまでの構築実績から

  • 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
  • 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
  • 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル

この記事の監修者

吉川 遼
吉川 遼よしかわ りょう株式会社 JAPAN SOLUTIONS CAIO(最高AI責任者)/ソフトウェア開発会社 CTO

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。

  • AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
  • 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化

主な登壇

執筆:ジャパンソリューションズ 編集部|運営会社について ↗

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