応募書類を1通ずつ読んで、一覧にまとめる。面接のメモを清書して、次の面接官に渡す。入社が決まれば、書類の不備を確かめて、同じ内容をいくつものシステムや表に書き写す。
今週の応募書類、まだ半分も読めてない…
面接の記録の清書も、明日までです
人事の担当者は、人に関わる大事な判断の前に、こうした作業に多くの時間を取られています。一方で、応募者や社員の個人情報をAIに入れてよいのか、AIが合否を決めることにならないか、という心配もあります。ご相談の中でも、作業は減らしたいが、人の判断と個人情報は守りたいという声をよく伺います。
この記事では、人事業務のAI活用を、採用・労務の手続き・社内問い合わせの仕事ごとに説明します。AIに任せる範囲と人が決める範囲の分け方、個人情報の守り方もまとめました。
この記事のポイント
- 人事でAIに任せやすいのは、応募書類の整理、面接記録の要点まとめ、規程や手続きの問い合わせへの回答、手続き書類の不備の確認
- 採用の合否、人事評価、異動や処分など、人に関わる判断はAIにさせない。AIは判断の材料をそろえるところまで
- 個人情報は、AIに見せる項目と、見られる人を役割ごとに絞ってから使う
人事のAI活用は、作業をAIに任せ、人に関わる判断は人が持つ
人事業務でAIに任せやすいのは、応募書類の整理、面接記録の要点まとめ、規程や手続きの問い合わせへの回答、手続き書類の不備の確認です。どれも、読む・まとめる・照らし合わせる・書き写すといった作業が中心です。
一方で、採用の合否、人事評価、異動や処分の決定は、AIに決めさせません。AIは判断の材料をそろえ、確かめるべき点を挙げるところまでにします。あわせて、個人情報はAIに見せる項目と、見られる人を絞ってから使います。
人事業務でAIに任せられる4つの仕事と、人が決めること
人事の仕事を、採用・労務の手続き・社内問い合わせに分けると、AIに任せやすい作業が見えてきます。
人事業務でAIに任せやすい4つの仕事
- 応募書類の整理経歴・資格・希望条件を、募集要項の項目に沿って同じ形の一覧にする
- 面接記録の要点録音やメモから、質問ごとの答えの要点と、まだ聞けていない項目をまとめる
- 規程・手続きの問い合わせ就業規則や手続きの手順書を根拠に、回答を返す
- 手続き書類の確認入社・退職・異動の書類で、足りない項目や食い違いを挙げる
4つとも、AIが受け持つのは作業の部分だけです。仕事ごとに、AIに任せることと人が決めることを分けると、次のようになります。
| 仕事 | AIに任せること | 人が決めること |
|---|---|---|
| 書類選考 | 応募書類を、募集要項の項目に沿って一覧にする | 誰を面接に呼ぶか |
| 面接 | 録音やメモから、答えの要点をまとめる | 評価と合否、応募者への連絡 |
| 入社・退職の手続き | 書類の不足や食い違いを挙げ、各システムに入れる内容をそろえる | 内容を確かめて承認する |
| 社内からの問い合わせ | 規程や手順書を根拠に答える | 体調や家庭の事情など、個別の事情がある相談への対応 |
| 人事評価・異動・処分 | 任せない(評価や給与のデータはAIに読ませない) | 評価・異動・処分のすべて |
人事評価・異動・処分は、作業の部分も含めてAIの対象から外します。評価や給与のデータは、AIに読ませない情報として最初に分けておきます。どの情報を読ませないかは、お客さまの規程に合わせて一緒に決めます。
社内問い合わせは、人事だけでなく総務や情報システムにも共通する仕事です。根拠になる文書の整え方や、答えられない質問を担当者につなぐ流れは、次の記事で詳しく説明しています。
詳しく解説した記事コラム社内問い合わせ対応をAIで減らすには?総務・情シス・人事の負担を軽くする進め方社内の問い合わせをAIで減らすには、同じ質問が何度も来る分野から始め、規程やマニュアルを根拠に答える仕組みを用意します。…採用:応募書類と面接記録はAIが整理し、合否は人が決める
応募が多い時期は、応募書類を読むだけで1日が終わることもあります。AIには、経歴・資格・希望条件・入社できる時期などを、募集要項の項目に沿って同じ形の一覧にさせます。一覧にそろうと、面接に呼ぶかを決める人が、応募者を同じ項目で見比べられます。
このときAIには、応募者に点数や順位を付けさせません。過去の採用結果をもとにAIに並べ替えさせると、これまでの選び方の偏りが、そのまま残る場合があります。募集要項に書いた条件を満たしているかの確認と、足りない情報の指摘までにとどめます。
面接の記録も、AIが手伝える作業です。録音やメモから質問ごとの答えの要点をまとめ、募集要項の項目のうち、まだ確かめていないものを挙げます。録音する場合は、応募者に伝えて了承を得てから行います。
面接記録をまとめる専用画面(イメージ)
面接記録のまとめ
- 面接の録音(応募者の了承済み)
- 面接官の手書きメモの写真
- 募集要項:営業職・中途採用
- 質問ごとの答えの要点
- 募集要項の項目で、まだ確かめていないもの
- 次の面接で聞くことの候補
AIは要点をまとめるだけで、評価と合否は面接官が書きます。応募者への連絡も、内容を確かめて人が送ります。当社のセミナー「AIに悩む会社から、AI×マーケティングで伸びる会社へ」でも、人とのやりとりと最終判断は人が持ち、AIは送る手前までにするとお伝えしました。
労務の手続き:入社書類の不足と食い違いをAIが挙げる
入社や退職の手続きは、書類を集めて確かめ、同じ内容をいくつものシステムに入れる仕事です。不備が見つかれば本人に聞き直すので、書類のやりとりが1往復増えます。
多くの拠点を持つ会社の人事部門へのご提案では、入社手続きの書き写しと書類の往復を減らす仕組みを考えました。それまでは、紙の書類を拠点で確かめて本社へ郵送していました。本社の人事は、同じ1人の入社を、基幹システムの発令の登録、入退社の一覧、社会保険の一覧にそれぞれ書き写していました。
入社手続きを見直す流れ(ご提案の例)
- 本人が書類を出すスマートフォンから提出する。拠点から本社への郵送がなくなる
- AIが不足と食い違いを挙げる足りない書類、形式の誤り、書類どうしで合わない項目だけを示す。担当者は挙がった点から確かめられる
- 人事が確かめて承認する指摘を見て本人に確認し、承認する。承認するまで、どこにも登録されない
- 共通の項目がそろう承認した内容が、基幹システムと一覧に同じ形で入る。書き写しがなくなる
このご提案では、承認は人が持ち、マイナンバーはこの仕組みの入力欄では集めない形にしました。基幹システムは作り替えず、もともとある取り込みの機能でつなぎます。担当者が直した箇所は、次から同じ指摘ができるようにルールとして残します。
退職や異動の手続きも、同じ流れで進められます。手続きの書類は様式が決まっているので、AIが下書きと確認を受け持ち、人が承認する形にしやすい仕事です。決まった様式の書類を記録から作る使い方は、マスターブレインの活用方法でも紹介しています。
個人情報は、AIに見せる項目と見られる人を絞る
人事のデータには、氏名・住所・連絡先・家族・健康・給与など、慎重に扱うべき情報が多く含まれます。AIを使う前に、どの情報をAIに見せ、誰が見られるようにするかを決めておきます。
人事のデータを守る4つの決まり
- 読ませない人事評価・給与・健康の情報などは、AIに読み込ませない
- 伏せてから使う氏名や連絡先は、プログラムが番号に置き換えてからAIに渡す
- 見られる人を分ける本人・上長・人事の担当者ごとに、見られる範囲を決める
- 記録を残す誰が、いつ、何を聞いたかを社内に残す
食品メーカーの情報システム部門へのご提案では、新しく入社した社員のアカウント発行を、AIに手伝わせる仕組みを考えました。入社のたびに、いくつものサービスでアカウントを1つずつ作る作業が、限られた担当者に集中していたためです。この仕組みでは、氏名や連絡先をそもそもAIに見せない設計にしました。
プログラムが氏名を番号に置き換え、AIは部署・役職・雇用形態だけを見て、必要な権限の案を作ります。人が承認した後に、プログラムが元のデータと照らし合わせて発行します。
見られる人の分け方も、先に決めておきます。事業部制の会社へのご提案では、日々の仕事の記録を自動で残す仕組みを考えました。管理職の時間がどの仕事に使われているかを知るためです。
この仕組みで見られる範囲は、本人は自分の記録すべて、上長は集計した数字だけ、人事は部門ごとの数字だけです。私用のやりとりは記録しません。
誰が何を見られるかは、人事の決まりとして、規程と一緒に決めておきます。社員に「監視されるのでは」と心配させないよう、記録しないものも最初に社員へ伝えます。社員がAIに入力してよい情報の決め方は、次の記事で説明しています。
あわせて読みたいコラム社内の生成AI利用ガイドラインの作り方|禁止する前に決めること社内の生成AI利用ガイドラインは、禁止事項だけでなく、使ってよい場面・入力してよい情報・出力の確かめ方・権利の注意まで書…
人事でAIを始めるときの、最初の仕事の選び方
最初は、件数が多く、判断の少ない作業を1つ選びます。入社手続きの書類の確認や、規程についての問い合わせは、件数を数えやすく、効果を確かめやすい仕事です。
人事制度の見直しを控えている会社では、制度との関係で仕事を分けると選びやすくなります。先ほどの人事部門へのご提案でも、制度が変わっても残る仕事、制度と一緒に変わる仕事、制度を考える材料になる仕事に分けました。書類のやりとりや書き写しは、制度が変わっても残るので、先に手を付けても無駄になりません。
始める前に、空いた時間を何に使うか、成果をどの数字(KPI)で確かめるかまで、お客さまと一緒に決めます。人事なら、空いた時間を面接や社員との面談、制度づくりに回す、といった使い道です。当社の導入支援でも、いちばん重い仕事1つから始め、削減できた時間を数字で確かめてから次の仕事に広げています。
AIにさせないことを、社内の承認を得るときにどう説明するかは、次の記事にまとめています。
あわせて読みたいコラムAI導入の社内稟議を通すには|添える書類と、AIにさせないことの書き方AI導入の社内稟議に添える4つの書類(接続先と権限の一覧、データの扱い、想定リスクと対応、効果の見込み)と、AIにさせな…マスターブレインを活用した人事業務
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
人事業務では、就業規則や手続きの手順書、応募書類、面接の記録を集めて整理し、採用や手続きの専用画面から使えるようにします。部署・役割ごとに見られる範囲を分け、評価や給与のように読ませない情報は最初に線引きします。合否・評価・承認は人が行い、AIはその直前で止まる設計です(マスターブレインの仕組み)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
人事の仕事で、AIに任せたい作業はどれですか?
マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- データが整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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