閉店後にスタッフのシフト希望を集めて表を作り、翌日の発注数を考え、本部に送る報告を書く。手が空いたら、お客さまからの問い合わせに返信する。フランチャイズ加盟店では、こうした作業が店長の手元に集まりがちです。
店長、来月のシフト希望はどこに出せばいいですか?
ごめん、発注が終わったら用紙を渡すね
AIで楽にしたくても、本部の決まりに反しないかが気になります。本部のシステムがあるのに、別の仕組みを入れてよいのかも迷うところです。加盟店がAIを使うときは、店舗だけでは決められないことがあります。
この記事では、加盟店のオーナー・店長の立場で、店舗で始めやすい仕事と、本部と決めることを説明します。
この記事のポイント
- フランチャイズ加盟店のAI導入は、シフト表・発注の準備・問い合わせへの返信・日報など、本部のシステムの外に残っている店舗の手作業から始める
- 本部のシステムにある機能はAIで作らない。本部のシステムのデータは読み取るだけにし、発注や登録は人が行う
- 始める前に、契約の決まり・お客さまの情報の扱い・本部のシステムとのつなぎ方を本部と決め、1店舗・1つの仕事で試した結果を本部と共有する
フランチャイズ加盟店のAI導入は、本部のシステムの外に残る作業から
加盟店でAIを導入するなら、本部が用意したシステムの外側に残っている、店舗の手作業から始めます。シフト表づくり、発注の準備、お客さまからの問い合わせへの返信、日報や本部への報告などです。どれも毎日・毎週くり返すので、減った時間を数えやすい仕事です。
ただし、加盟店は本部の決まりの中で店舗を運営しています。始める前に、契約の決まり、お客さまの情報の扱い、本部のシステムとのつなぎ方を本部と確かめます。本部と決めてから1店舗で試し、その結果を本部と共有すると、ほかの店舗にも広げやすくなります。
店舗で始めやすい仕事は、シフト・発注・問い合わせ・日報
店舗の仕事の中でAIに任せやすいのは、毎日・毎週くり返し、手順がある程度決まっている作業です。AIが下書きや候補を作り、店長やスタッフが確かめて決めます。
| 仕事 | 今かかっている手間 | AIに任せること | 人が決めること |
|---|---|---|---|
| シフト表づくり | スタッフの希望をLINEや紙で集め、表に書き写して組む | 希望を集め、時間帯ごとの必要人数に沿ったたたき台を作る | 誰をどの時間に入れるか、スタッフとの調整 |
| 発注の準備 | 過去の売れ方や天気を見ながら、発注数を考える | 過去の売れ方から、発注数の候補とその理由を出す | 発注数を決めて、本部の発注システムに入れる |
| お客さまからの問い合わせ | 営業時間や予約について、同じ質問に何度も答える | 店舗の決まりや本部のマニュアルをもとに、返信の下書きを作る | 返信を確かめて送る、苦情や例外への対応 |
| 日報・本部への報告 | 本部のシステムの数字を書き写し、その日の出来事を書き足す | 数字と店長の一言メモから、日報と報告の下書きを作る | 内容を確かめて提出する |
| 新しいスタッフからの質問 | 店長や先輩が、同じ手順を何度も説明する | 店舗の手順書をもとに、質問に答える | 手順書を最新のものにしておく、答えられない質問への対応 |
どの作業が本部のシステムに入っているかは、本部によって違います。
お客さまへの返信は、AIが下書きを作るところまでにして、送るのは店長やスタッフです。当社のセミナー「AIに悩む会社から、AI×マーケティングで伸びる会社へ」でも、人とのやりとりと最終判断は人が持ち、AIは送信の手前までにするとお伝えしました。人に引き継ぐ流れは、問い合わせ対応の記事で説明しています。
最初は、店長がいちばん時間を取られている作業を1つ選びます。日報と本部への報告なら、画面は次のような形です。
閉店後に開く日報・報告の画面(イメージ)
日報・本部への報告
- 今日の売上・客数(本部のシステムから読み取る)
- 店長の一言メモ(話して入れる)
- 気になった出来事(品切れ、お客さまからの声など)
- 日報の下書き(店舗の書式)
- 本部に送る週ごとの報告の下書き
- 本部に確かめたほうがよい項目
画面は、店舗の仕事の流れに合わせて当社が設計・構築します。店長やスタッフが覚えるのは、ボタンの位置だけです。業務ごとの画面の例は、マスターブレインの活用方法でも紹介しています。
あわせて読みたいコラム日報のAI活用|書く負担を減らし、集まった日報を仕事に使う方法日報のAI活用は、書く人の手間と読む人の手間の両方を減らすことから始めます。音声や予定から日報の下書きを作る方法、集まっ…本部のシステムと重ならない仕事を選ぶ
フランチャイズでは、本部がレジや発注、売上管理のシステムを加盟店に用意していることがよくあります。AIで同じ機能を作ると、店舗ではどちらを使うかで迷います。本部とも、どの数字の話なのかがかみ合わなくなります。
住宅・不動産のフランチャイズ加盟店網へのご提案では、本部が共通の業務システムを用意していました。一方で、その外側に加盟店ごとの手作業が残っていました。新しく出た物件を毎日手で探して一覧にする作業や、同じ物件を複数の物件サイトに入れ直す作業などです。そのため、広告を見たお客さまからの問い合わせへの返信に、時間を回せないというご相談でした。
このご提案は、残っていた手作業をAIで減らすものです。その際、本部のシステムにある機能は作らず、重ならない部分だけを加盟店ごとに作る方針をお示ししました。手作業の1つずつについて、いつ楽になるかの目安もお示ししています。
AIで作らない仕事と、AIに任せる仕事
- レジと売上の集計
- 本部の発注システムでの発注
- 本部が決めた販促の内容
- 本部のシステムの数字を、日報に書き写す
- スタッフのシフト希望を集めて、表にする
- お客さまからの同じ質問に、毎回返信を書く
迷ったときは、本部のシステムから数字や文章を書き写している作業を探します。書き写しが起きている作業が、本部のシステムの外に残った手作業です。
始める前に本部と決めること(契約・データ・システム)
加盟店は、本部と結んだフランチャイズ契約と、本部のマニュアルに沿って店舗を運営しています。AIを使う前に、店舗だけで決めてよいことと、本部の了承が要ることを分けておきます。契約の中身は本部によって違います。まずは次の項目を、本部やSV(店舗を回って運営を支える本部の担当)に確かめます。
AIを使う前に、本部に確かめること
- フランチャイズ契約や本部のマニュアルに、外部のツールやサービスを使うときの決まりがあるか
- 本部のシステムのデータを、外部の仕組みから読み取ってよいか
- お客さまの情報を誰が管理していて、AIにどこまで読ませてよいか
- 本部のマニュアルや手順書を、AIに読ませてよいか
- お客さまへの返信やチラシで守る、言葉づかいやブランドの表現の決まり
- 本部がAIの仕組みをすでに用意しているか、用意する予定があるか
本部のシステムとつなぐときは、AIは本部のシステムのデータを読み取るだけにし、書き込みや登録は人が行う形にすると、本部も判断しやすくなります。
お客さまやスタッフの情報は、扱い方を3つに分けて本部と決めます。線引きは、本部の決まりと店舗の事情に合わせて一緒に決めます。
| 扱い方 | 店舗の情報の例 | AIでの扱い |
|---|---|---|
| そのまま扱う | 店舗の売上・客数、発注の履歴、シフト希望 | 本部の了承を得た範囲で、AIが読み取る |
| 伏せてから扱う | お客さまの名前や電話番号が入った問い合わせ | 名前や電話番号を伏せてから、返信の下書きに使う |
| 扱わない | お客さまの支払いの情報、スタッフの給与や評価、私用の連絡 | AIに読み込ませない |
スタッフが自分のスマホのAIに、お客さまの情報を貼りつけて使うことにも注意が要ります。当社では、いちばん大きなリスクは、会社が管理していない個人のAIだと考えています。禁止するだけで終わらせず、店舗として使ってよいAIと使い方を決めておきます。
あわせて読みたいコラム社内の生成AI利用ガイドラインの作り方|禁止する前に決めること社内の生成AI利用ガイドラインは、禁止事項だけでなく、使ってよい場面・入力してよい情報・出力の確かめ方・権利の注意まで書…本部の側でも、AIで店舗の数字を集める仕組みを作る例があります。当社はフランチャイズ本部に、店舗別の分析ダッシュボードを構築しました。店舗の数字をまとめて見る画面です。数字を取りに行く作業をなくし、改善案まで自動で出す形です。数字を集める時間は、月150時間から月15時間に減る見込みです。
本部がこうした仕組みを持っているなら、店舗で別に作る前に、どう使い分けるかを確かめます。本部の側から見たAI活用は、次の記事で説明しています。
詳しく解説した記事コラムフランチャイズ本部のAI活用|店舗の数字集めをなくし、改善案まで出すフランチャイズ本部のAI活用は、店舗の数字を人が集める作業をなくすところから始めると効果が見えやすくなります。店舗別の分…スタッフに新しい入力作業を足さない
ご相談の中でも、「社員にやらせると『また新しいことを覚えるのか』となる」という声をよく伺います。アルバイトやパートのスタッフが多い店舗では、なおさらです。
住宅・不動産のフランチャイズ加盟店網へのご提案でも、スタッフに関わる論点が2つありました。1つは、社員に新しい入力作業を1つも足さないことです。もう1つは、「監視の道具ではないか」という不安です。見る範囲を先に決め、愚痴や雑談は読み込ませない、という線引きをお示ししました。
AIを使い始める前に、スタッフに伝える3つのこと
- 覚えるのはボタンの位置だけ店舗用の専用画面から使う。AIへの指示文を考えなくてよい
- 最後に決めるのは人返信の送信、発注の確定、シフトの決定は、これまでどおり店長やスタッフが行う
- 見ない範囲を決めてあるスタッフ同士の雑談や私用の連絡は、AIに読み込ませない
記録をためる作業は人に頼まず、AIの側で受け持つように画面を設計します。日報なら、店長が一言話すだけで下書きができます。

1店舗・1つの仕事で試し、結果を本部と共有する
最初から全部の仕事を対象にすると、本部に確かめることも、スタッフに説明することも多くなりすぎます。当社では、いちばん時間がかかっている仕事を1つ選び、減った時間を数字で確かめてから広げる進め方をとっています。複数の店舗を持つオーナーの方も、まずは1店舗から始めます。
加盟店でAIを始めるときの進み方
- ご相談店長の時間を取っている仕事を1つ選ぶ今かかっている時間を測る。後で比べる数字になる
- 本部に確認契約・データ・システムを確かめる確かめることの一覧を持って本部やSVに相談し、了承を得た範囲で進める
- 1店舗で試す専用画面を店舗で使うAIの下書きを店長が確かめて使い、直した点を反映する。店舗のやり方に沿った下書きが出るようになる
- 比べるかかる時間を始める前と比べる減った時間が分かると、続けるか、ほかの仕事に広げるかを決められる
- 共有結果を本部に伝える1店舗の数字があると、本部もほかの加盟店も判断しやすくなる
住宅・不動産のフランチャイズ加盟店網へのご提案でも、同じ進め方をお示ししました。まず勉強会で動くデモを見ていただき、手を挙げた1店舗で重い手作業を1つ選んで始めます。その1店舗の数字を持って、ほかの店舗に広げる進め方です。フランチャイズでは、1店舗で出た数字を見せてから広げる順番が、本部と加盟店の決め方に合っています。
広げるかを数字で判断するため、当社では支援を始める前に、2つのことをお客さまと一緒に決めます。空いた時間を何に使うかと、成果をどの数字で確かめるかです。店舗なら、空いた時間を店頭でお客さまと話す時間や、スタッフを育てる時間に回す、といった使い道です。進め方はマスターブレインの導入支援で紹介しています。
マスターブレインを活用したフランチャイズ加盟店の店舗業務
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
店舗の日報やシフト希望、お客さまとのやりとりを、今ある場所のまま集めて整理します。AIが参照するのは、本部と決めた範囲だけです。本部のシステムのデータは読み取るだけで、送信・発注・最終判断は店長やスタッフが行います。集める・整理する・守る・参照して判断する・人が確かめる、の5つの層はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
店長の手元に残っている作業は、どれですか?
マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- データが整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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