「AIエージェントを使えば、仕事をまるごと任せられるのでは」と試してみたものの、途中で止まってしまった。AIの結果を結局すべて人が確かめ直していて、前より手間が増えた。AI活用を検討し始めた会社から、ご相談の中でこうしたお話をよく伺います。
請求書づくり、まるごとAIに任せられますか?
途中で判断がいるから、まるごとは難しいよ
止まる原因の多くは、1つの仕事の中に、性質の違う作業が混ざっていることです。この記事では、業務フローを入力・判断・出力・確認の4つの工程に分け、工程ごとにAI・プログラム・人のどれが受け持つかを決める手順を説明します。判断の基準を言葉にできるかの見分け方と、例外を誰が受けるかの決め方もまとめました。
この記事のポイント
- 1つの仕事を、入力(情報を集める)・判断・出力(書類を作る)・確認(確かめて出す)の4つの工程に分ける
- 工程ごとに、AI・プログラム・人のどれが受け持つかを決める。計算や照合は、毎回同じ答えが出るプログラムに任せる
- 判断の工程は、基準を言葉にできるかで受け持ちを決める。AIが扱えない例外を誰が受けるかも、先に決めておく
AIに任せる工程は、仕事を4つに分けてから選ぶ
AIエージェントに仕事を任せるときは、1つの仕事を入力・判断・出力・確認の4つの工程に分けてから、工程ごとに受け持ちを決めます。入力は情報を集める工程、判断は条件に当てはめて決める工程です。出力は書類やメールを作る工程、確認は確かめて外に出す工程です。
受け持ちの候補は、AI・プログラム・人の3つです。文章を読んでまとめる作業はAI、計算や照合はプログラム、基準のない判断と外に出す操作は人が持ちます。工程ごとに受け持ちを決めると、AIに任せてよい範囲と、人が確かめる場所がはっきりします。
仕事をまるごと任せると止まる理由
請求書づくりを例に考えます。この仕事には、受注や作業の記録を集める、請求してよいかを決める、請求書を作る、金額を確かめて送る、という性質の違う作業が含まれています。
これをまとめてAIに任せると、どの作業で間違えたのかが分からなくなります。その結果、人が結果のすべてを一から確かめ直すことになり、手間が減りません。工程に分けておけば、人が確かめる場所を絞れます。
仕事をまるごと任せる場合と、工程に分けて任せる場合
- どの作業で間違えたのかが分からない
- 人が結果のすべてを確かめ直す
- いつもと違う案件で止まっても、誰も気づかない
- 工程ごとに、受け持ちと人が確かめる場所が決まっている
- 金額の計算はプログラムが受け持ち、毎回同じ答えが出る
- いつもと違う案件は、決めておいた担当者に届く
4つの工程に分けると、請求書づくりは次のようになります。
請求書づくりを4つの工程に分ける(説明例)
- 入力:情報を集める受注の記録、作業の実績、追加費用の登録を集める。請求に使う材料が1か所にそろう
- 判断:条件に当てはめる請求してよい案件か、追加費用を含めるかを決める。いつもと違う案件が分かれる
- 出力:書類を作る自社の書式で請求書を作る。送る前の下書きができる
- 確認:確かめて出す金額と宛先を確かめて送る。請求書がお客さまに届く
工程ごとに、AI・プログラム・人から受け持ちを選ぶ
工程を分けたら、それぞれの受け持ちを決めます。AIとプログラムは、どちらも人の代わりに作業を進めますが、得意なことが違います。
工程の受け持ちを決める3つの候補
- AI文章や記録を読んでまとめる。下書きを作り、確認が必要な点を挙げる
- プログラム金額の計算、記録どうしの照合、決まった形への書き写し。毎回同じ答えが出る
- 人基準のない判断と、例外への対応。お客さまへの送信と決裁
計算や照合のように、毎回同じ答えが出てほしい作業は、プログラムに任せます。AIは文章を扱うのが得意な一方で、計算では誤りが出る場合があるからです。
請求書づくりの場合、工程ごとの受け持ちは次のように分けられます(説明例)。
| 工程 | すること | 受け持ち | 理由 |
|---|---|---|---|
| 入力 | 受注の記録、作業の実績、追加費用の登録を集める | プログラム(記録の取り込み)とAI(メールに書かれた変更の読み取り) | 決まった場所の記録は取り込むだけで済む。メールの文章は読んで意味を取る必要がある |
| 判断 | 請求してよい案件かを決める | AI(基準に当てはめて候補を出す)と人(例外の案件) | 言葉にできる基準はAIに任せられる。基準に当てはまらない案件は人が決める |
| 出力 | 自社の書式で請求書を作る | プログラム(金額の計算)とAI(添え状の下書き) | 金額は毎回同じ答えが出る必要がある |
| 確認 | 金額と宛先を確かめて送る | 人 | お客さまに届くものの責任は、人が持つ |
受け持ちの分け方は、仕事の内容や社内の決まりに合わせて決めます。
受け持ちと、人が承認する場所は、実際の仕事を1件書き出しながら決めます。当社のセミナー「製造業の『見えない製造ライン』をカイゼンする」でも、1件の仕事を書き出して止まる場所を見つけ、AI・自動化・人の担当と、承認する場所を決める進め方をお伝えしました。
あわせて読みたいコラム報告書作成をAIで効率化する方法|集計・定型文・所見を分けて確かめる報告書作成をAIで効率化するには、数字の集計・決まった文章・所見を分け、作り方と確かめ方を決めることが大切です。月次報告…判断の工程は、基準を言葉にできるかで分ける
4つの工程のうち、受け持ちを決めるのがいちばん難しいのは判断の工程です。判断の基準を言葉にできるかどうかで、AIに任せられるかが決まります。
たとえば「作業が完了し、追加費用の登録がない案件は、そのまま請求する」は、言葉にできる基準です。一方で、「この取引先は、今月は請求を待ったほうがよい」のような判断は、担当者の経験の中にしかない場合があります。
判断の工程を誰が受け持つか
判断の基準を言葉にできる ↑
- AIに任せる基準に当てはめて、AIが判断の候補を出す。人は結果をまとめて確かめる
- AIが進め、例外は人へ基準に合う案件はAIが進め、合わない案件は担当者に回す
- 先に基準を聞き取るベテランに判断の理由を聞き、言葉にしてからAIに渡す
- 人が判断するAIは、過去の似た案件と判断の材料をそろえるところまでにする
例外が多い →
言葉になっていない基準も、ベテランに実際の案件を見ながら理由を聞くと、言葉にできることがあります。言葉にできた基準から順にAIに渡すと、任せられる範囲が少しずつ広がります。
詳しく解説した記事コラム属人化をAIで解消するには?ベテランの判断を会社に残す手順「あの人に聞かないと分からない」仕事をAIで減らすには、ベテランが判断した理由を記録して、AIが使えるようにすることが必…例外を誰が受けるかを、先に決めておく
AIに任せた工程でも、基準に当てはまらない案件は必ず出てきます。例外の案件が来たら、AIは推測で進めずに止まり、決めておいた担当者に回します。回す先が決まっていないと、例外の案件はどこにも届かず、止まったままになります。
例外の案件を担当者に回すやりとり(説明例)
今月分の請求書の下書きを作ってください。
今月分の下書きを作りました。作業の予定と実績が合わない案件は、下書きにせず、担当の営業に確認を回しています。根拠:受注の記録/作業の実績/追加費用の登録
担当の営業が確かめた案件から、請求に進めます
例外を受ける人は、例外の種類ごとに決めます。予定と実績が合わない案件は担当の営業、取引の条件が変わった案件は管理部門の責任者、のように分けておきます。
当社の社内でも、請求書の発行は「入力は1回、確認は例外だけ」という形にしています。営業は変更や追加費用を決まった入口に1行で登録し、管理部門は同じ内容を入力し直しません。未確認の変更などの警告がすべて片づいてから、請求書を出します。
人が例外に対応したら、どう判断したかをルール帳に1行ずつ残します。同じ例外が次に来たときは、残したルールを使ってAIが候補を出せるようになります。

人が確かめる場所を決めて、1つの仕事から切り出す
AIやプログラムが途中で確かめる仕組みを入れても、最後に人が確かめる工程は残ります。どの工程の後に人が確かめるかを、受け持ちと一緒に決めておきます。当社のセミナー「Claude Codeで、何ができるのか?」でも、出す前の自動のチェックがあっても人の最終確認はなくならず、どこで人が確かめるかを決めることが大切だとお伝えしました。
工程の切り出しは、次の順番で進めます。
- 時間がかかっている仕事を1つ選び、実際の1件を最初から最後まで書き出す
- 書き出した作業を、入力・判断・出力・確認の4つの工程に分ける
- 工程ごとに、AI・プログラム・人の受け持ちと、人が確かめる場所を決める
- 例外の種類ごとに、受ける担当者を決める
- 過去の案件で試し、人が直した点をルールに足してから、毎日の仕事で使う
最初から全部の仕事を対象にせず、いちばん時間がかかっている仕事を1つ選んで始めます。1つ目の仕事で空いた時間を数字で確かめてから、次の仕事に広げるのが当社の進め方です。メールの送信や支払いなど、操作ごとに人の承認が必要かを分ける考え方は、次の記事で説明しています。
あわせて読みたいコラムAIエージェントとは?チャット型AIとの違いと、業務での使いどころAIエージェントは、目標を伝えると、手順を考えて道具を使い、仕事を最後まで進めるAIです。チャット型AIとの違い、業務で…マスターブレインを活用した工程の切り出し
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
入力の工程で使う書類・メール・業務データを1か所に集め、判断の工程で使う基準はルール帳に1行ずつ残します。出力の工程では、業務ごとの専用画面から自社の書式で下書きが出て、送信・決裁は人が行います。工程ごとの受け持ちと人が確かめる場所は、当社がお客さまと一緒に決めて設計します(マスターブレインの仕組み)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
その仕事、どの工程からAIに任せますか?
マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- データが整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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