介護や福祉の現場では、利用者と向き合う時間を取りたいのに、日々の記録と書類づくりに追われている、というお話をよく伺います。拠点や利用者が増えるほど書類の量は増え、行政の確認に備えて抜け漏れがないかも気になります。
今月の記録から、様式に沿って書類の下書きを作りました
記録とずれていないか、確認するね
この記事では、介護・福祉の書類作成をAIで効率化する方法を、日々の記録から書類を作る流れに沿って説明します。利用者の情報をどう扱うかも、あわせてまとめました。
この記事のポイント
- 介護・福祉の書類作成は、日々の記録を1か所に集め、決まった様式に沿ってAIが下書きを作る形にすると、書く時間を大きく減らせる
- 人は、AIが作った書類を記録と見比べて確かめる。抜け漏れの確認もAIに手伝わせる
- 利用者の情報は、置き場所と見られる範囲を最初に決める。外部のAIの学習には使わない
介護・福祉の書類作成は、記録をもとにAIが下書きを作る形にする
介護・福祉の書類作成をAIで効率化するには、日々の記録を1か所に集め、決まった様式に沿ってAIが書類の下書きを作る形にします。担当者は、記録を見ながら様式に書き写す作業から離れ、出来上がった下書きを確かめるだけになります。
書類の中身は、すべて日々の記録がもとになっています。記録さえそろっていれば、様式に合わせて書き写す作業はAIに任せられます。利用者の様子を見て記録を残すこと、書類を確かめて承認することは、これまでどおり人が行います。
介護・福祉の書類作成に時間がかかる理由
まず、書類作成のどこで時間がかかっているかを確かめてみましょう。次のうち、当てはまるものはありますか。
書類作成に時間がかかっている事業所によくある状態
- 日々の記録を見ながら、様式ごとに手で書き写している
- 記録が、紙・Excel・業務システムに分かれている
- 拠点や担当者が増えるほど、書類の量と確認の手間が増える
- 担当者によって、書き方や書く量がばらばらになる
- 行政の確認に備えて、抜け漏れがないかを一つずつ探している
どれも、書く内容そのものより、記録を探して集め、様式に合わせて書き写し、抜け漏れを探す作業に時間を取られている状態です。この3つの作業は、AIが得意とするところです。
拠点が多い事業所では、拠点ごとに書き方が少しずつ違うことも負担になります。本部で書類を確かめる人は、拠点ごとの書き方を読み解きながら確認することになり、その分だけ時間がかかります。
日々の記録から書類を作る流れ
書類作成の流れを、集める・書く・確かめるの3つに分けると、AIを使ったときの変わり方が分かりやすくなります。
| 工程 | いま | AIを使うと |
|---|---|---|
| 集める | 担当者ごとの記録を探して集める | 記録が1か所に集まっている |
| 書く | 様式に合わせて、手で書き写す | 様式に沿った書類の下書きを、AIが作る |
| 確かめる | 抜け漏れを、人が一つずつ探す | AIが抜け漏れや記録とのずれを一覧にし、人はそれを確かめる |
記録から書類ができるまで(イメージ)
- サービス提供の記録
- 担当者のメモや申し送り
- 予定と実績
- 様式どおりの書類の下書き
- 抜け漏れや、記録とのずれの一覧
- 人が確認する箇所
確かめる工程では、AIに「確認が必要なところ」を先に一覧にしてもらうと、人は一覧を上から見ていくだけで済みます。
確認が必要な箇所をAIに聞く(説明例)
今月の書類で、確認が必要なところはどこですか?
3名分で、記録の入っていない日があります。また2件で、予定と実績の時間がずれています。該当する記録を並べて表示します。根拠:今月のサービス提供の記録/予定と実績の一覧
記録を足すか、ずれの理由を書くかは、担当者が判断します
特定の事業所の記録や、実際のAIの出力ではありません。
様式は、事業所でいま使っているものをそのまま使います。過去の書類を読み込ませておくと、これまでと同じ書き方・同じ様式のまま、下書きが出てきます。新しい書き方を覚える必要はありません。
AIに向いている仕事の見分け方は、次の記事で詳しく説明しています。件数が多く、使うデータがあり、出来上がりの形が決まっている書類作成は、AIに向いている仕事の代表です。
詳しく解説した記事コラムAIで業務効率化できる仕事とは?向いている仕事・向いていない仕事の見分け方AIで業務効率化できるのは、件数が多く、使うデータがあり、出来上がりの形が決まっていて、最後に人が確かめられる仕事です。…訪問介護・障害福祉の事業者での構築実績
当社は、訪問介護と障害福祉のサービスを複数の拠点で行う事業者(利用者2,825名規模)で、AIの書類作成システムを構築しました。拠点ごとの日々の記録をもとに、決まった様式の書類をAIが作る仕組みです。
訪問介護・障害福祉の事業者での実績
書類作成にかかる時間は、約10分の1になりました。行政の運営指導も、このシステムで作った書類だけで完了しています。日々の記録をもとに様式どおりに作った書類で、行政の確認まで対応できた例です。
拠点が多いほど、書類の書き方がそろう効果も大きくなります。どの拠点の書類も同じ様式・同じ書き方で出てくるので、本部で確かめる人も、同じ見方で確認できます。
書類の量が多い事業所ほど、空いた時間も大きくなります。空いた時間を、利用者と向き合う時間や、職員の育成などに回せるよう、何に使うかもあわせて決めておきます。
利用者の情報の扱いを、最初に決める
介護・福祉の記録には、利用者の健康状態や家族のことなど、特に慎重に扱うべき情報が多く含まれます。AIを使い始める前に、情報をどこに置き、誰が見られるかを決めておきます。
利用者の情報を守るために決める4つのこと
- 置き場所を選ぶ社内のサーバーの中に作ることもでき、社内ネットワークから切り離した構成の実績もある
- 外部の学習に使わない法人向けの契約のAIを使い、入れた情報がAIの学習に使われない形にする
- 見られる範囲を分ける拠点や役職ごとに、見てよい記録の範囲を決める
- 使った記録を残す誰が、いつ、何を見たり作ったりしたかを社内に残す
書類づくりに使わない情報は、最初からAIに読ませません。どの情報をAIで扱い、どの情報を扱わないかは、事業所の規程に合わせて一緒に決めます。
たとえば、拠点ごとの記録の件数や傾向を見るような使い方では、利用者の名前などを伏せてから扱います。書類を作るために必要な情報と、全体の傾向を見るために使う情報を分けて考えると、扱い方を決めやすくなります。
あわせて読みたいコラム社内ナレッジをAIで活用するには?始める前にやっておくデータの整理社内ナレッジをAIで活用するときは、全部のデータをそろえてから始める必要はありません。最初の仕事に使うデータだけを選び、…
人が確かめることと、始め方
AIが作るのは、あくまで書類の下書きです。AIと人の受け持ちを、先に分けておきます。
書類作成での、AIと人の受け持ち
- 担当者ごとの記録を集める
- 様式に沿って書類の下書きを作る
- 抜け漏れや記録とのずれを一覧にする
- 利用者の様子を見て、記録を残す
- 下書きを記録と見比べて確かめ、承認する
- 行政への提出や、内容の説明をする
始めるときは、いちばん時間がかかっている書類1種類と、1つの拠点から始めます。その書類で作成時間がどれだけ減ったかを確かめてから、ほかの書類やほかの拠点に広げます。記録が紙やExcelに分かれていても、今ある形のまま確認を始められます。進め方の全体は、次の記事でまとめています。
職員の方からは「AIに任せると、記録の質が落ちるのでは」という心配が出ることもあります。記録を残すのは、これまでどおり利用者を見ている職員です。AIはその記録を様式に書き写し、抜けを知らせるだけなので、記録の中身は変わりません。職員が覚えるのは、専用画面のボタンの位置だけです。
あわせて読みたいコラム生成AI導入の進め方|検討から定着までの6ステップと、導入前のチェックリスト生成AIの導入は、目的と対象の仕事を決めるところから、効果を確かめて広げるところまで、6つのステップで進めます。各ステッ…マスターブレインを活用した介護・福祉の書類作成
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
拠点ごと・担当者ごとの日々の記録を1か所に集め、事業所の様式に沿って書類の下書きを作ります。抜け漏れや記録とのずれも一覧にするので、人は出てきた書類を確かめるだけです。情報の置き場所や見られる範囲は事業所の規程に合わせて決め、外部の学習には使いません。職員が使うのは、当社が業務の流れに合わせて設計・構築する専用画面です。仕組みの全体像はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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これまでの構築実績から
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この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
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主な登壇
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