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技術伝承にAIを活用する方法|ベテランの知恵を、若手が現場で聞ける形に残す

技術伝承にAIを使うときは、手の感覚で覚える技能と、状況を見て判断する知識を分けて考えます。AIで残せる部分、記録と聞き取りの進め方、手順書を古くしない工夫を図解で説明します。

技術伝承にAIを活用する方法|ベテランの知恵を、若手が現場で聞ける形に残す

長年現場を支えてきたベテランが、あと数年で定年を迎える。若手に引き継ぎたいけれど、毎日の仕事に追われて教える時間が取れない。しかも、大事なことほどマニュアルには書かれておらず、ベテランの頭の中にある。製造業や建設業のお客さまとのご相談の中でも、伺うことの多いお悩みです。

この仕事の勘どころ、どうやって残せばいいんだろう

マニュアルに載っていないことばかりで、不安です

大事なことほど、ベテランの頭の中にしかありません。

技術伝承にAIを使うと、ベテランの経験を記録して、若手が必要なときに聞ける形にできます。ただし、AIで残せることと、残せないことがあります。この記事では、その見分け方と、記録・聞き取りの進め方を説明します。

この記事のポイント

  • 技術伝承は「手の感覚で覚える技能」と「状況を見て判断する知識」に分けて考える
  • AIが受け持つのは、判断の知識・過去の事例・手順の部分。手の感覚は現場で教える
  • ベテランの話や作業の記録からAIが手順書の下書きを作り、ベテランは直すだけにする

AIで残せるのは、判断の知識と過去の事例

技術伝承にAIを使うときは、まず伝えたいことを手の感覚で覚える技能と、状況を見て判断する知識に分けます。AIが受け持てるのは、主に判断の知識や、過去のトラブルとその対応、決まった手順の部分です。

ベテランの話、作業の記録、過去の報告書をAIに集めておくと、若手は現場で質問するだけで、根拠付きの答えを受け取れます。ベテランに聞きに行かなくても、その場で「前はどうしたか」が分かる状態を目指します。

技術伝承で伝えるべき4つのこと

ひと口に技術といっても、中身はいくつかに分かれます。どれをAIで残し、どれを現場で教えるかを先に決めておきましょう。

技術伝承で伝えるべき4つのこと

  • 手順決まった作業の流れや、段取りの順番
  • 判断状況を見て、どう対応するかを決める見極め
  • 過去の事例以前に起きたトラブルと、そのときの対応
  • 手の感覚体で覚える力加減や、音・におい・手触りの違い

4つのうち、AIが得意なのは手順・判断・過去の事例の3つです。残りの手の感覚は、言葉や記録だけでは伝わりにくいので、これまでどおり現場で教えます。

伝えることAIで残しやすいか残し方
手順残しやすい作業の記録から、AIが手順書の下書きを作る
判断聞き取れば残せる実際の案件を見ながらベテランに理由を聞き、ルールとして書き残す
過去の事例残しやすい不具合の報告書や対応の記録を集め、質問すれば探せるようにする
手の感覚残しにくい現場で教える。注意点や目安だけを記録に残す

AIに任せることと、人が教えること

AIを使っても、すべてをAIで伝えられるわけではありません。当社のご提案でも、図面や配置の設計、現場での判断などは人が担う範囲として、最初にAIの範囲と分けてお見せしています。

技術伝承でのAIと人の役割分担

AIに任せること
  • 過去のトラブルと対応を探して答える
  • 作業の記録から手順書の下書きを作る
  • 答えの根拠になった記録を示す
人が教えること
  • 手の感覚や力加減を、現場で教える
  • AIが作った手順書を確認して直す
  • 初めての状況や、迷う場面で判断する

AIを使うと、ベテランの役割も変わります。AIが作った手順書や答えに、赤を入れる役割になります。ゼロから教える必要はありません。若手は、ベテランの手が空くのを待たずに、まずAIに聞いてから、分からない点だけを相談できます。

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ベテランの経験を記録して、手順書にする

ベテランに手順書を書いてもらおうとしても、忙しくてなかなか進みません。当社のご提案では、ふだんの仕事の記録から、AIが手順書を起こす形をお示ししています。ベテランは、出てきた下書きを確認して直すだけです。

ベテランの経験を手順書にする流れ

  1. 記録する作業中の説明や打ち合わせを録音し、写真や報告書も集める
  2. 理由を聞く迷いそうな場面で、なぜそうしたのかを聞く
  3. 下書きを作る集めた記録から、AIが手順書の下書きを作る
  4. 赤を入れるベテランが確認して、足りない点を直す

聞き取りでは、「ふだんどうしていますか」と聞くより、実際に起きたトラブルの報告書を見ながら聞くほうが、判断の理由を具体的に話してもらえます。聞き取りの詳しい進め方は、こちらの記事で説明しています。

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記録がたまると、若手は現場から質問できるようになります。

若手が現場でAIに質問する(説明例)

3号機から、いつもと違う音がします。止めたほうがいいですか?

過去に同じ症状が2回あり、どちらも点検のために停止しています。点検の手順は、保全の手順書の5章にあります。根拠:不具合報告 2件/保全の手順書 5章

判断に迷うときは、保全の担当者に引き継ぎます

上のやりとりは、仕組みを説明するための例です。

特定のお客さまの設備や記録、実際のAIの出力ではありません。

当社の構築実績では、素材メーカーで、担当者のPCに散らばっていた開発の記録と報告書を1か所に集めました。営業も開発も、聞けばその場で答えが分かる状態を目指したもので、削減見込みは月257時間です。

手順書を古くしない工夫

手順書は、作った後に古くなるのが悩みです。作業のやり方が変わっても、手順書の修正は後回しになりがちです。

当社の活用例では、打ち合わせの録音を入れると、手順書やマニュアルの変わった所が一覧で出てくる形にしています。一覧の各行には、もとになった発言が付くので、なぜ変わったのかも後から確かめられます。打ち合わせで決まらなかったことは反映しません。

たとえば、イベントの運営マニュアルづくりにこの仕組みを使う例があります。運営マニュアルは、全体を取りまとめる人用・現場スタッフ用・協力会社用と、同じ内容を何種類も書き分ける必要があります。変更が入るたびに全部を直すので、どれか1つが直し漏れることもよくあります。案件の情報と参考資料を入れると、3種類のマニュアルが同時に出来上がり、打ち合わせで決まった変更も一覧で確かめられます。この例では、マニュアル1本の準備にかかる時間が、25〜50時間から5〜10時間に減る見込みです。

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拠点や担当者ごとのやり方を、1つにそろえる

技術伝承を進めると、拠点や担当者ごとに、やり方が少しずつ違うことに気づく場合があります。当社がご相談を受けた会社でも、拠点ごとに図面の測り方や入力の仕方が少しずつ違っていました。

やり方がばらばらな状態と、そろえた状態

拠点ごとにばらばら
  • 同じ作業でも、拠点や人によって手順が違う
  • 異動した人が、新しい拠点で戸惑う
  • 何が正しいやり方か、誰も説明できない
1つのルール帳にそろえる
  • 標準のやり方と、その理由が書き残されている
  • 拠点ごとの例外も、理由と一緒に分かる
  • 新しい人も、同じ手順で仕事を始められる

こうした会社へのご提案では、まず1つの拠点で毎日使って効果を確かめ、全拠点に広げるときに、拠点ごとの決まりをそろえていく進め方をお示ししました。記録を集める作業が、そのまま社内のやり方をそろえるきっかけになります。

全国に組織を持つ会社へのご提案では、分厚いマニュアルを引いても答えが見つからず、本部に電話で確認しているという課題がありました。職員が質問するとすぐに答えが返る仕組みは、新しく入った人が早く一人前になる助けにもなります。

技術伝承にAIを使い始めるときの注意点

最後に、始める前に決めておきたいことをまとめます。

始める前に決めておくこと

  • 最初に残す技術を1つに絞る(例:トラブル対応、段取り替え)
  • 協力してもらうベテランと、使う若手を決める
  • 作業の録音や写真を撮ることを、現場に伝えて了解を得る
  • AIが作った手順書を、誰が確認して承認するか
  • AIが答えられないとき、誰に引き継ぐか

ベテラン本人には、聞き取りの目的を最初に伝えておきます。目的は、同じ質問に何度も答える時間を減らし、ベテランにしかできない仕事や、手の感覚を教える時間を増やすことです。当社のセミナー「製造業の「見えない製造ライン」をカイゼンする」でも、製造業の管理業務をAI・自動化・人の判断に分けて整理する考え方をお伝えしました。

マスターブレインを活用した技術伝承

マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。

ベテランの話や作業の記録、過去の報告書を集めて整理し、判断の理由は聞き取ってルール帳に残します。若手は、仕事ごとの専用画面から質問するだけで、根拠付きの答えを受け取れます。担当者が替わっても、技術と判断の記録は会社に残ります。仕組みの全体像はマスターブレインの仕組みで紹介しています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

ベテランの知恵を、若手が現場で聞ける形にしませんか?

マスターブレインは、会社の資料・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずは資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。

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この記事の監修者

吉川 遼
吉川 遼よしかわ りょう株式会社 JAPAN SOLUTIONS CAIO(最高AI責任者)/ソフトウェア開発会社 CTO

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。

  • AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
  • 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化

主な登壇

執筆:ジャパンソリューションズ 編集部|運営会社について ↗

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