社内の資料をAIに読ませて、質問に答えてもらいたい。そう考えて調べると、必ず出てくるのが「RAG(ラグ)」という言葉です。ただ、説明を読んでも専門用語が多く、自社で何ができるのかが分かりにくいと感じる方も多いと思います。
出張の日当って、いくらだったっけ?
旅費規程の第6条に書いてあります。金額と条文を表示しますね
この記事では、RAGの仕組みを専門用語をできるだけ使わずに説明します。普通のAIとの違いや、向いている使い方、使うときの注意点もまとめました。
この記事のポイント
- RAGは、AIが答える前に社内の資料から関係する部分を探し、それをもとに答える仕組み
- 資料を更新すれば答えも変わり、答えの根拠になった資料を示せる
- 資料に書かれていないことや、会社ごとの判断は、別に用意する必要がある
RAGとは、資料を探してから答える仕組み
RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれます。読み方は「ラグ」です。AIが質問に答える前に、社内の資料の中から関係する部分を探し、その内容をもとに答えを作る仕組みのことです。
ChatGPTのような普通のAIは、学習した一般的な知識だけで答えます。そのため、自社の規程や過去の案件のことは知りません。RAGを使うと、AIが自社の資料を見ながら答えられるようになります。
RAGの仕組みを4つのステップで説明
RAGの流れは、次の4つのステップに分けられます。社員から見ると、普通のAIに質問するのと同じように使えます。
RAGが答えるまでの流れ
- 質問する社員が、知りたいことを入力する
- 資料を探す社内の資料から、関係する部分を探す
- 答えを作る探した内容をもとに、AIが答える
- 根拠を示す答えのもとになった資料を表示する
ポイントは2つ目の「資料を探す」ステップです。社内の資料は、あらかじめAIが探しやすい形に整理しておきます。質問が来るたびに、その中から関係する部分だけを取り出して、AIに渡します。
RAGを使った質問と答え(説明例)
取引先が初めての会社です。契約の前に何を確認すればいいですか?
新規取引の手順では、与信の確認と、反社会的勢力でないことの確認が必要です。確認が終わったら、部長の承認を得てから契約します。根拠:取引先管理規程 第5条/新規取引チェックリスト
規程に書かれていない例外は、総務の担当者に引き継ぎます
特定のお客さまの規程や、実際のAIの出力ではありません。
普通のAIや「追加学習」との違い
RAGと普通のAIの違いを、表と図にまとめます。
普通のAIとRAGの違い
- 学習した一般的な知識で答える
- 自社の規程や過去の案件は知らない
- 答えの根拠を確かめにくい
- 社内の資料を探してから答える
- 資料を更新すれば、答えも新しくなる
- 根拠になった資料を示せる
社内の情報をAIに覚えさせる方法には、AIそのものに追加で学習させる方法もあります。ただ、社内の資料に答えさせる目的なら、多くの場合はRAGのほうが向いています。
| 比べること | RAG | AIに追加で学習させる方法 |
|---|---|---|
| 資料が変わったとき | 資料を差し替えれば、すぐ答えに反映される | もう一度学習させる必要がある |
| 答えの根拠 | どの資料をもとに答えたかを示せる | どこから来た答えかを示しにくい |
| 見せる範囲の調整 | 人によって、探す資料の範囲を変えられる | 覚えた内容を人によって分けるのは難しい |
| 向いている使い方 | 社内の質問への回答、資料の検索 | 文章の書き方や言葉づかいを合わせたいとき |
RAGが向いている使い方
RAGは、答えが資料の中に書かれている質問に強い仕組みです。たとえば次のような使い方があります。
RAGが向いている4つの使い方
- 社内の質問への回答規程やマニュアルをもとに、総務や人事への質問に答える
- 過去の案件を探す似た案件の資料や、そのときの対応を探し出す
- 手順の確認作業手順書をもとに、次にやることを答える
- 問い合わせの下書き過去の回答をもとに、お客さまへの返信の下書きを作る
当社が構築した地域医師会のチャットボットでは、業務フロー資料157ファイルを構造化し、検証した208問すべてに正しく答えられました。また、通販・EC事業者の社内QAでは、答えられる人がベテラン2名しかいない状態を解消しています。
過去のやりとりを探す使い方では、見つかった記録をそのまま並べると、経験の浅い社員には読み解けないことがあります。当社のご提案の中では、記録を「何が起きて、どう対応して、どうなったか」の3行にまとめて返す形をお示ししました。
RAGでできないことと、注意点
RAGは便利な仕組みですが、何でも答えられるわけではありません。使う前に、次の点を知っておきましょう。
| 注意点 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 資料に書かれていないこと | 答えられない、または推測で答えてしまう | 答えられないときは担当者に引き継ぐよう設定する |
| 古い資料が混ざっている | 古い規程や単価で答えてしまう | 資料ごとに版と管理する人を決め、古い版は外す |
| 会社ごとの判断 | 資料にない判断の理由は再現できない | ベテランから判断の理由を聞き、ルールとして書き残す |
| 見てはいけない資料 | 権限のない人に、答えとして出てしまう | 役職や部署ごとに、探す資料の範囲を分ける |
特に大切なのは、3つ目の「会社ごとの判断」です。RAGは資料を探して答える仕組みなので、資料に書かれていない判断の理由までは答えられません。そうした判断を扱うには、担当者に聞き取った判断のルールを、資料と一緒にAIに渡す必要があります。
あわせて読みたいコラム属人化をAIで解消するには?ベテランの判断を会社に残す手順「あの人に聞かないと分からない」仕事をAIで減らすには、ベテランが判断した理由を記録して、AIが使えるようにすることが必…RAGを社内に入れるときに決めること
RAGを社内で使い始める前に、資料の扱いと置き場所を決めておきます。当社では、マスターブレインを次の5つの層に分けて設計しています。RAGは、このうち4つ目の層にあたります。
マスターブレインの5つの層
- 集める書類・メール・会議の記録・業務データ・担当者の判断の理由
- 整理する案件・相手・日付で整理し、元の記録にすぐ戻れるようにする
- 守る見られる範囲と、資料を更新する手順を決める
- 探して答える社内の資料を探して答える(RAG)。外部のAIの学習には使わない
- 人が確かめる根拠を示し、送信や決裁は人が行う
資料の置き場所も選べます。当社のご提案では、資料は今の保存場所から動かさず、AIが読み取りだけで見に行く形をお示ししています。御社のPCや社内のサーバーの中に作る形も選べ、社内ネットワークから切り離して作った実績もあります。当社のセミナー「AIに「会社の脳」を持たせるには?」でも、散らばった情報をつないで使う考え方を紹介しました。
導入の進め方で迷ったときは、よくあるつまずきを先に知っておくと役に立ちます。
あわせて読みたいコラムAI導入が失敗する原因と、避けるための進め方AI導入がうまくいかない原因の多くは、AIの性能より進め方にあります。よくある5つの原因と、それぞれの避け方を、当社がご…マスターブレインでRAGを業務に生かす
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
RAGの基盤に加えて、担当者から聞き取った判断のルールや、人が直した内容を記録する「ルール帳」も一緒に設計します。そのため、資料に書かれていない会社ごとの判断にも対応できます。現場の方は、仕事ごとの専用画面から使うだけです。仕組みの全体像はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
御社の資料で答えるAI、どの資料から始めますか?
マスターブレインは、会社の資料・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずは資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- 資料が整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
- 製造業の「見えない製造ライン」をカイゼンする2026年9月
- AIに「会社の脳」を持たせるには?2026年8月
- Claude Codeで組織はどう変わる?AI時代の組織設計2026年7月
- 第21回 CONVERSION SUMMITに登壇2026年6月
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