通販・ECの仕事は、受注が増えるほど、細かな作業も増えていきます。お届け日の変更やキャンセル、返金のメールに1件ずつ返事をする。売上の数字を見たくても、扱える人に頼んで待つ。過去の企画書や商品画像を探すのにも時間がかかる。売上を伸ばす施策を考えたいのに、毎日の作業で手一杯という声をよく伺います。
先月、リピートが落ちた商品ってどれだろう…
商品別にまとめました。落ちた商品と、その時期を表にしますね
この記事では、通販・ECのAI活用を、メール対応・データ分析・社内ファイル検索の3つの仕事から始める方法を説明します。顧客データをどう扱うかも、あわせてまとめました。
この記事のポイント
- 通販・ECのAI活用は、件数の多いメール対応、社員が自分で聞けるデータ分析、過去の資料や画像の検索の3つから始めやすい
- メールの送信やカートの操作は人が行い、AIは返信の下書きと処理の手順を用意するところまでにする
- 顧客データは今の場所から動かさず、見られる範囲を分け、分析には名前や住所を使わない
通販・ECのAI活用は、件数の多い3つの仕事から始める
通販・ECでAIを使い始めるなら、メール対応・データ分析・社内ファイル検索の3つから始めると、効果を確かめやすくなります。どれも毎日のように発生し、件数と時間を数えやすい仕事です。
通販・ECの会社には、長年ためてきた受注の記録や、お客さまとのやりとりがすでにあります。新しくデータを集めなくても、今あるデータをそのままAIの材料にできるのが、通販・ECの強みです。
通販・ECで始めやすい3つの仕事
3つの仕事で、それぞれAIに任せられることをまとめます。
通販・ECで始めやすい3つの仕事
- メール対応変更・キャンセル・返金などのメールに、返信の下書きと処理の手順を用意する
- データ分析社員が言葉で聞くと、受注のデータから表やグラフが出てくる
- 社内ファイル検索過去の企画書や商品画像を、条件を入れてすぐに探し出す
3つとも、通販・ECの会社にすでにあるデータを使うので、始めるための準備が少なくて済みます。
当社が構築した仕組みでは、社員70名規模の通販会社で、この3つをまとめて組み込みました。メールの一次処理、社員が自分で聞ける分析、社内ファイルの検索です。依頼から1週間かかっていた分析が、当日に分かるようになる形です。
通販(社員70名規模)での構築例
効果を時間と人数、回収期間で考える方法は、次の記事で詳しく説明しています。
詳しく解説した記事コラムAI導入の費用対効果の考え方|時間・品質・機会の3つで測るAI導入の費用対効果は、空いた時間だけでなく、品質と、増やせる仕事(機会)の3つで測ります。効果の測り方、試算を見込みと…メール対応:返信の下書きと、処理の手順を用意する
お届け日の変更・キャンセル・返金のメールは、件数が多く、対応の仕方もある程度決まっています。化粧品・健康食品の通販会社とのご相談でも、こうしたメールにマニュアルを見ながら1件ずつ返信していて、毎日多くの時間を取られている、というお話でした。
メール対応にAIを使う流れ
- メールが届くお客さまから、変更やキャンセルの依頼が届く
- AIが内容を分ける変更・キャンセル・返金・質問のどれかに分ける
- 下書きと手順を作るマニュアルと過去の返信をもとに、返信の下書きと処理の手順を用意する
- 人が確かめて送る担当者が中身を確かめて送り、カートの変更も人が行う
お届け日の変更メールへの対応(説明例)
このメール、どう対応すればいいですか?
お届け日の変更のご依頼です。まだ発送の準備に入っていないので、変更できます。返信の下書きと、カートで日付を変える手順を用意しました。根拠:お届け日変更のマニュアル/同じ内容の過去の返信
発送の準備が始まっている場合は、担当者に回します
特定の会社の手順や、実際のAIの出力ではありません。
このご相談へのご提案でも、メールの送信とカートの操作は人が行う形にしました。AIには、受注のデータを変更する権限を持たせません。AIは返信と手順の準備まで、確かめて実行するのは人、という分け方にしておくと、間違いが起きてもお客さまに届く前に止められます。
データ分析:社員が自分で聞ける形にする
売上や受注の数字を見たいとき、データを扱える人が限られていると、頼んでから結果が出るまで待つことになります。分析を待つ間に、施策を打つ時期を逃してしまうこともあります。
社員が自分で聞ける形にするには、受注・売上・在庫などのデータに、AIが読み取りだけでつなぐ形にします。データを新しい場所に移す必要はありません。社員が「先月、リピートが落ちた商品は?」と聞けば、表やグラフで返ってきます。「広告から初めて買ったお客さまのうち、2回目も買った人はどのくらい?」のように、施策を考えるときの疑問をそのまま聞けます。
通販・ECのデータを、施策に使える形にする(イメージ)
- 受注・売上・在庫のデータ
- お客さまからのメールや問い合わせ
- レビューやアンケートの声
- 商品別・時期別の売れ行き
- 離れたお客さまの傾向と理由
- よくある要望や不満
健康食品の通販会社へのご提案では、お客さまの声と購買の記録を突き合わせて、お客さまが離れやすい時期と理由を見つける形を考えました。数字だけでなく、お客さまの声と合わせて見ると、次の施策が決めやすくなります。お客さまの声は、まずメール・レビュー・アンケートのように、すでに文章になっているものから使い始めると、現場の作業を変えずに始められます。
当社のセミナー「AIに『会社の脳』を持たせるには?」でも、分散するデータと知見をつないで、施策や経験を会社の知識としてためていく考え方をお伝えしました。
社内ファイル検索と、社内の問い合わせ
過去の企画書や商品画像が、部署や個人のフォルダにばらばらに置かれていると、担当が替わるたびに場所が分からなくなります。条件を入れればすぐに探し出せる形にしておくと、企画や販促の準備が早くなります。商品画像は、商品名や撮影した時期、使った企画などの情報を付けて整理しておくと、言葉で探せるようになります。
通販・EC事業者の社内QAとコールセンターでは、社内に専用機を置き、社内ネットワークから切り離した構成で仕組みを構築しました。社内の質問に答えられるのがベテラン2名だけという状態を解消し、問い合わせの約50%を占める電話の内容も分析できるようにしています。社内の問い合わせ対応の進め方は、次の記事で説明しています。
あわせて読みたいコラム社内問い合わせ対応をAIで減らすには?総務・情シス・人事の負担を軽くする進め方社内の問い合わせをAIで減らすには、同じ質問が何度も来る分野から始め、規程やマニュアルを根拠に答える仕組みを用意します。…
顧客データの扱いを、先に決める
通販・ECのデータには、お客さまの名前・住所・電話番号・購入の記録などが含まれます。AIを使い始める前に、どの情報を、どう扱うかを決めておきます。
| 情報 | 例 | AIでの扱い |
|---|---|---|
| 注文・売上・在庫 | 商品ごとの受注件数、在庫の数 | 今の場所に置いたまま、AIが読み取りだけで見に行く |
| お客さまを特定できる情報 | 名前・住所・電話番号 | 分析に使うときは伏せる。メールの返信では担当者が確かめる |
| 決済の情報 | カードの番号など | AIに読ませない |
売れ行きや傾向を分析するのに、お客さまの名前や住所は要りません。入れる前に線を引いておけば、分析を進めながら、お客さまの情報を守れます。部署や役職ごとに見られる範囲も分け、誰が・いつ・何を聞いたかの記録も社内に残します。
始めるときは、3つの仕事のうち、いちばん時間がかかっているもの1つから始めます。1つ目の効果を確かめてから、残りの仕事に広げていきます。効果は、メール1件にかかる時間や、分析の結果が出るまでの待ち時間を、始める前と後で比べて確かめます。
マスターブレインを活用した通販・ECの業務
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
受注・売上・在庫のデータ、お客さまとのやりとり、過去の企画書や商品画像を、今の置き場所のままつないで整理します。社員は、メール対応・分析・検索のための専用画面から使い、返信の送信やカートの操作は人が行います。お客さまの情報は見られる範囲を分け、分析には伏せた形で使います。仕組みの全体像はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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- 仕組みと、5つの層の役割
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これまでの構築実績から
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- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
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この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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