社内の問い合わせを減らそうと、チャットボットを入れた。最初は使われていたのに、しばらくすると誰も開かなくなった。質問しても「該当する回答が見つかりません」と返ってくるので、結局は担当者に電話している。
チャットボットに聞いても「見つかりません」ばかりだ…
答えは、共有フォルダのどこかにあるはずなのに
当社がご相談を受ける中でも、「前にツールを入れたが、社員が使わず定着しなかった」という声をよく伺います。この記事では、社内AIチャットボットの2つの型の違い、入れただけで使われない5つの失敗と対策、作るときの手順を説明します。
この記事のポイント
- 社内AIチャットボットには、決まった質問と答えを登録する型と、社内のデータを探して答える型があり、向いている質問が違う
- 使われなくなる原因で多いのは、答えられなかった質問がそのままになることと、質問する場所が普段の仕事から離れていること
- 作るときは、対象の質問と根拠にするデータを決め、検証用の質問で確かめてから公開し、答えられなかった質問への答えを1件ずつ追加していく
社内AIチャットボットは、答えられない質問を直す流れまで作る
社内AIチャットボットを作るときは、まずどの型で作るかと、答えられなかった質問を誰がどう直すかを決めます。決まった質問と答えを登録する型は、登録した質問にしか答えられません。社内のデータを探して答える型は、文書に書いてあることなら、登録していない聞き方の質問にも答えられます。
どちらの型でも、入れただけでは使われ続けません。答えられなかった質問を担当者に回し、その答えを追加していくと、チャットボットが答えられる質問が増えていきます。社員が普段使う場所から質問できることも大切です。
社内AIチャットボットの2つの型の違い
社内チャットボットには、大きく2つの型があります。1つは、決まった質問と答えをあらかじめ登録しておく型です。もう1つは、社内のデータ(規程・マニュアル・過去の問い合わせの記録など)から、関係する部分を探して答える型です。
| 比べる点 | 質問と答えを登録する型 | 社内のデータを探して答える型 |
|---|---|---|
| 答え方 | 登録した質問に近いものを選び、登録した答えを返す | 質問に関係する文書の部分を探し、それをもとに答えを作る |
| 答えられる質問 | 登録した質問だけ | 文書に書いてあることなら、聞き方が違っても答えられる |
| 始める準備 | 質問と答えを1つずつ登録する | 根拠にする文書を選び、最新版をそろえる |
| 規程が変わったとき | 関係する答えを人が探して直す | 文書を差し替えれば、答えも変わる |
| 向いている質問 | 手順が決まっていて、答えを一字一句そろえたい案内 | 規程やマニュアルが多く、聞かれ方がさまざまな質問 |
登録する型は、答えがぶれないのが長所です。一方で、登録していない聞き方をされると答えられず、質問と答えを登録する作業も担当者の負担になります。データを探して答える型は、文書に書いてあれば答えられますが、文書が古かったり重複していたりすると、答えもずれます。
実際には、2つを組み合わせることもよくあります。答えを一字一句そろえたい案内は登録しておき、それ以外は社内のデータを探して答える、という分け方です。社内のデータを探して答える仕組みは、検索拡張生成(RAG)と呼ばれます。
詳しく解説した記事コラムRAGとは?社内のデータをもとにAIに答えさせる仕組みをわかりやすく解説RAG(検索拡張生成)は、AIが答える前に社内のデータから関係する部分を探し、その内容をもとに答える仕組みです。普通のA…入れただけで使われない、よくある5つの失敗
使われなくなった社内チャットボットには、共通する状態があります。当てはまるものがないか、確かめてみてください。
使われなくなるチャットボットによくある状態
- 質問すると「見つかりません」と返ることが多い
- 答えは出るが、古い規程の内容が混ざっている
- 答えられなかった質問を、誰も確かめていない
- 質問するには、普段使わない画面を開く必要がある
- 答えに根拠の文書が出ないので、結局担当者に確かめている
それぞれの状態の裏には、作るときや入れた後の失敗があります。失敗の型と対策をまとめます。
| 失敗の型 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 答えを登録しきれない | 登録していない聞き方に答えられず、「見つかりません」が続く | 社内のデータを探して答える型を組み合わせる |
| 文書をまとめて全部入れる | 古い版や、別の部署の文書をもとに答えてしまう | 最新版だけを読ませ、文書ごとに管理する人を決める |
| 答えられない質問を放っておく | 同じ質問で何度も答えられず、社員が聞かなくなる | 担当者に回し、答えを確かめてから追加する |
| 質問する場所が仕事から離れている | 開くのが面倒で、人に聞くほうが早くなる | 社員が普段使う画面やアプリから質問できるようにする |
| 根拠が出ない | 答えが正しいか分からず、担当者に確かめ直す | 答えと一緒に、根拠にした文書の名前と箇所を出す |
5つの中で特に多いのが、答えられなかった質問が放っておかれ、社員が「聞いても答えが出ない」と感じてしまう失敗です。入れた後に誰が答えを追加するかが決まっていないと、この状態になります。答えられない質問を担当者に回す流れは、社内問い合わせ対応をAIで減らす方法で説明しています。
質問する場所の問題も、見落とされがちです。当社のセミナー「Claude Codeで組織はどう変わる?AI時代の組織設計」でも、社員が自分で使い方を覚えなくてよい形にすることが大切だとお伝えしました。質問するたびに別の画面を開いたり、AIへの指示の書き方を考えたりする必要があると、忙しい社員ほど使わなくなります。
社内AIチャットボットを作る5つの手順
社内AIチャットボットは、次の手順で作ります。最初から全社の質問を対象にせず、1つの部署の質問から始めると進めやすくなります。
社内AIチャットボットを作る流れ
- ステップ1対象の質問を決める過去の問い合わせの記録から、よく聞かれる質問を選ぶ。どの部署の、どんな質問に答えるかがはっきりする
- ステップ2根拠にするデータを決める規程やマニュアルの最新版と、管理する人を決める。古い文書をもとに答える心配が減る
- ステップ3検証用の質問で確かめる正しい答えが分かっている質問を用意して採点する。公開してよいかを数字で判断できる
- ステップ4普段使う場所に置く社員が普段使う画面やアプリから質問できるようにする。わざわざ別の画面を開く手間がなくなる
- 公開後答えられない質問を追加する担当者に回った質問への答えを確かめて追加する。答えられる質問が増えていく
手順の中で省かれやすいのが、検証用の質問で確かめる段階です。地域医師会(関西・会員約440名)では、業務フロー資料157ファイルを構造化し、LINEで答えるチャットボットを構築しました。検証した208問すべてに、正しく回答できています。
当社の構築実績から
この例のように、チャットボットは使う人がいつも開いている場所から質問できるようにすると、使われやすくなります。検証用の質問の作り方と採点の進め方は、RAGの回答精度が上がらない原因と、社内文書の整え方で説明しています。
すでにあるチャットボットや自作のQ&Aは、置き換えずに生かす
社内には、担当者が作ったQ&Aや、社内のシステム担当が作ったチャットボットがすでにあることも多いものです。新しい仕組みを入れるときに、それらを全部作り直す必要はありません。
ご相談を受けた通販の会社では、担当者が汎用のAIを使って、社内の質問に答えるQ&Aを自作していました。ご提案の中では自作のQ&Aを置き換えずに生かし、答えられない質問への担当者の答えを、会社の記録として残す形にしました。社内のチームがチャットボットを自作している別の会社でも、その取り組みは続けてもらい、並行して進める形をご提案しています。
社内AIチャットボットが答えに使うデータ(イメージ)
- 規程・マニュアル最新版だけを読む
- 自作のQ&Aこれまでの質問と答えを生かす
- 担当者の答え回ってきた質問への回答を追加する
- 過去の問い合わせの記録よく聞かれる質問が分かる
- 業務システムの情報読み取りだけでつなぐ
大切なのは、どのデータを答えの根拠にするかを決め、担当者が直した答えが次から使われるようにしておくことです。当社では、人が直したことを「ルール帳」に1行ずつ残し、同じことを二度言わなくてよい形にしています。

使われ続けるために、公開した後に見ること
社内チャットボットが使われ続けるかどうかは、公開した後の手入れで決まります。公開した後は、次の3つの数字を定期的に確かめます。
- 質問した社員の数:チャットボットが使われているかどうかが分かる
- 答えられなかった質問の件数:次に追加すべき答えが分かる
- 担当者に回った質問の件数:担当者の負担がどれだけ減ったかが分かる
答えられなかった質問の一覧は、次に追加する答えの候補になります。担当者が答えを確かめて追加すれば、同じ質問には次からチャットボットが答えます。規程が変わったときに文書を差し替える担当者も決めておくと、古い答えが残りません。
社員は、使い始めのころに答えが返ってくるかどうかで、使い続けるかを決めがちです。最初は1つの部署の、答えが文書に書いてある質問に絞り、答えられる状態を確かめてから対象を広げます。当社の導入でも、限られた担当者に試してもらい、現場で直した点を反映してから全員が使える状態にしています(導入支援の進め方)。
あわせて読みたいコラム社内でAIが定着しない理由と、社員が自然に使う仕組みのつくり方AIツールを入れても社内で使われないのは、使う場面が仕事の流れの外にあるからです。定着しない5つの理由と、社員がAIを意…マスターブレインを活用した社内AIチャットボット
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
社内AIチャットボットでは、規程・マニュアル・過去の問い合わせ・担当者の答えを集めて最新版を整理し、「参照と判断」の層で根拠を示して答えます。部署や役職ごとに見られる範囲を分け、担当者が直した答えは「ルール帳」に1行ずつ残ります。社員が質問する画面は、当社が業務の流れに合わせて設計・構築します(マスターブレインの仕組み)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
そのチャットボット、答えられなかった質問はどこへ行きますか?
マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- データが整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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