2026年10月19日(米国時間)、OpenAIは、COBOL・Fortran・Visual Basicのような古いプログラミング言語で、ソフトウェアを作ったり、ほかの言語に移したりする力について、新しいモデルの評価結果を発表しました。前のモデルと比べて、正しく動くプログラムを書ける割合が大きく上がったという内容です。
当社がご相談を受ける中でも、「システムが独自すぎて、中身を読み込めない」という声を伺います。作った人がもう社内にいないシステムを、そのまま使い続けている場合もあります。この記事では、発表で何が示されたか、前のモデルと何が違うか、自社のシステムの移行に使うときに何を確かめればよいかを説明します。
古い計算処理を、新しい言語に書き直した案です
端数の扱い、前と同じ結果になってる?
この記事のポイント
- OpenAIの発表によると、新しいモデルはCOBOLのプログラムを別の言語に移す評価で、前のモデルより大幅に高い正解率になった
- 評価では、移した後のプログラムが前と1バイトも違わない出力を出すかを、隠したテストで確かめている
- OpenAI自身も、本番のシステムに使うには、専門家の確認と、自社の業務ルールに沿ったテストが必要だと書いている
古い言語のプログラムを書く力と、別の言語に移す力が上がった
OpenAIの発表によると、新しいモデルは、COBOLやFortranのように学習の材料になるプログラムや説明書が少ない言語でも、正しく動くプログラムを書ける割合が上がりました。COBOLのプログラムを別の言語に移す評価では、前のモデルの5.4%に対し、新しいモデルは86.6%でした(どちらも考える量を少なくした設定)。
前のモデルとの違いは、正解率だけではありません。同じ評価で、API費用も前のモデルの61%だったと発表されています。ただし、OpenAIは本番のシステムに使うときは、専門家の確認とテストが必要だとしています。
発表された内容:2つの評価で前のモデルと比べた
OpenAIは、古い言語には難しさがあると説明しています。説明書がそろっていない、作った人がもう社内にいない、大事な業務のルールがプログラムの中にしか書かれていない、といったことです。そこで、2つの評価を作って新しいモデルの力を測りました。
- 一から作る評価(MultiLangBench):SQLite(データベースのソフトの1つ)と同じように動くデータベースの仕組みを、20種類の言語で一から作らせる
- COBOLの移行の評価:COBOLのプログラムを、C++・Java・Kotlin・Python・Rustのどれかに書き直させ、元と同じ動きをするかを確かめる
移行の評価では、移した後のプログラムの出力が、元のプログラムと1バイト単位で同じかを確かめます。テストの中身はモデルに見せません。すべてのテストに合格したときだけ「移行できた」と数えます。
OpenAIのCOBOL移行の評価の流れ
- 元のプログラムお金の処理などをするCOBOLのプログラムを用意する
- AIが書き直すPythonなど指定した言語に移す。動きは元と同じにする
- 隠したテストモデルに見せないテストで、出力を1バイト単位で比べる
- 判定するテストがすべて合格したときだけ、移行できたと数える
提供の範囲について、公式ページでは、APIを通じて自社の言語のコーディングで試せると案内しています。日本での提供の条件は、この発表では示されていません。一から作る評価の進め方とテスト、言語ごとの結果は、GitHubで公開されています。
前のモデルとの違い:正解率と費用の見積もり
発表では、前のモデル(GPT-5.6 Sol)と、新しい3つのモデルを比べています。数字はすべてOpenAIの発表によるものです。
| 比べた項目 | 前のモデル(GPT-5.6 Sol) | 新しいモデル |
|---|---|---|
| 一から作る評価:20言語の平均の合格率 | 26.8% | GPT-6 Astra:87.4%(考える量を最大にした設定) |
| 一から作る評価:言語ごと(GPT-6 Astra) | COBOL 10.9%、Fortran 21.4%、Visual Basic 27.5% | COBOL 72.1%、Fortran 83.5%、Visual Basic 89.4% |
| 一から作る評価:費用を抑えたモデル | 26.8% | GPT-6 Luna:40.3%(考える量を最大にした設定)。推定のAPI費用は約78%低い |
| COBOLの移行の評価 | 5.4%(考える量を少なくした設定) | GPT-6.1 Sol:86.6%(同じ設定)。API費用は前のモデルの61%。考える量を増やすと97.9% |
| いちばん難しかった言語 | - | GPT-6 Astraでも、COBOLは72%で20言語の中で最も低い |
表の「考える量」は、公式ページで reasoning effort と書かれている設定です。どのモデルを、どの設定で使うかによって、結果と費用は変わります。正解率を重く見る仕事と、費用を重く見る仕事で、選ぶモデルが変わります。
OpenAIは、移行で気をつける点の例も挙げています。COBOLの計算では、丸めを指定しないと、はみ出した小数の桁は切り捨てられます。書き直したプログラムがその値を丸めてしまうと、エラーは出ないまま、お金の計算結果だけが変わります。
詳しく解説した記事コラムAIのPoC(検証)の進め方|正解のあるデータで小さく試して判断するAIのPoC(本格導入の前の小さな検証)の進め方を説明します。正解のある案件の選び方、採点と直す時間の記録のしかた、進む…仕事での使いどころと、使う前に確かめること
この発表がいちばん関わるのは、古い言語で作られた社内システムを、新しい言語や仕組みに移したい会社です。以下は説明のための例です。受発注や請求の計算をCOBOLのプログラムで続けてきた会社が、プログラムをPythonに書き直す場面を考えます。
システムの移行でのAIと人の受け持ち(説明例)
- 古いプログラムを読み、処理の流れを書き出す
- 新しい言語での書き直しの案を作る
- 元と新しいプログラムの出力を比べるテストの案を作る
- 端数・締め日・例外の扱いが業務ルールどおりか
- テストに使う過去のデータの選び方
- 本番を切り替えてよいかの判断
AIでプログラムを移すときに使う情報と、出てくるもの(説明例)
- 古いプログラム
- 端数・締め日・例外の業務ルール
- 過去の実際の入力と結果
- 新しい言語のプログラムの案
- 新旧で結果が違った件の一覧
- 人が確かめる項目
使う前に、次のことを確かめておくと安心です。
AIでシステムを移す前に確かめること
- プログラムをAIに渡してよいか(社外に出せない情報や、取引先との契約で決まっていることがないか)
- 使うAIのサービスで、入れた情報が学習に使われない契約になっているか
- 元のシステムと同じ結果かを比べる、正解のある過去のデータを用意できるか
- 業務のルール(端数の扱い・例外の処理)を説明できる人が社内にいるか
- 切り替えた後に問題が出たとき、元のシステムに戻す手順があるか
移す前の準備にも、AIは使えます。ご相談を受けた会社では、長年使ってきたデータベースの表の名前が略号だらけで、何に使う表か分からないものが混ざっていました。AIと一緒に読み解き、その日のうちに、表の役割とつながりを書き出した資料ができました。
あわせて読みたいコラムAI活用は内製か外注か|依頼前に整理することと、社内に残すものAI活用を内製にするか外注にするかを決める5つの基準、依頼の前に決めておく対象業務・データ・確認する人・運用の4つ、外注…当社の見解:プログラムの中にある会社のルールを書き出しておく
AIがプログラムを書き直す力は上がっています。それでも、元のプログラムが正しいのか、どの結果が会社として正しいのかは、AIだけでは決められません。移行の前に、プログラムの中にしかない業務のルールを、人が読める言葉で書き出しておくことが大切です。
当社が、入社手続きの書き写しを減らす仕組みをご提案した際も、同じ考え方をとりました。給与計算は、本番の計算の裏で新旧の仕組みを並べて計算し、差がゼロの月が続いてから切り替える段取りを組みました。新しい仕組みに移すときは、同じ結果になることを過去の実際のデータで確かめてから切り替えます。OpenAIの評価で、出力を1バイト単位で比べているのと同じ考え方です。
当社では、仕組みをお渡しするときに、対象業務・データとルールの一覧・条件と例外・人が確認する箇所をまとめた「業務と判断の設計」をあわせてお渡ししています。ルールが言葉で残っていれば、使うAIのモデルが替わっても、同じ基準で結果を確かめられます。進め方は導入支援のページで紹介しています。
最新の内容は公式ページでご確認ください。

マスターブレインを活用した業務ルールの整理
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
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