建設の仕事では、現場ごとに図面・写真・日報・打ち合わせの記録がたまっていきます。日中は現場に出て、報告書や見積書は事務所に戻ってからまとめる。そんな毎日を送っている方も多いのではないでしょうか。
前に似た改修工事をしたの、どの現場だったっけ…
写真は、当時の担当者のPCにあるはずです
過去の工事の記録はあるのに、どこにあるかは担当していた人しか知らない。数量の拾い方や、工事で気をつける点の判断も、ベテランの頭の中にある。この記事では、建設業でAIを使い、現場ごとの記録と過去の工事を、書類づくりと判断に活かす方法を説明します。
この記事のポイント
- 建設業のAI活用は、図面・写真・日報など現場ごとの記録と、過去の工事の記録をつなぐところから始める
- AIに任せやすいのは、図面からの数量拾いと見積もり、施工記録からの報告書の下書き、似た工事の検索、ベテランの判断の記録の4つ
- 安全と品質の最終判断、見積もり金額の確定、お客さまへの連絡は、これまでどおり人が行う
建設業のAI活用は、現場ごとの記録をつなぐところから始める
建設業でAIを使うときは、まず現場ごとの図面・写真・日報・打ち合わせの記録を、工事ごとにまとめます。記録に「どの工事の・誰との・いつの話か」が付いていれば、AIは過去の似た工事を探したり、書類の下書きを作ったりできます。
AIが出すのは、数量や報告書の下書きと、確認が必要な点のリストです。安全と品質の判断、金額の確定は、これまでどおり人が行います。AIは、人が判断するための材料をそろえる役を受け持ちます。
建設業でAIが使える4つの仕事
建設業の仕事の中で、AIに任せやすいのは、記録を読んで書類にまとめる仕事と、過去の記録を探す仕事です。次の4つから始めると、効果を確かめやすくなります。
建設業でAIが使える4つの仕事
- 図面からの数量拾いと見積もり図面から数量と長さを拾い、自社の書式の見積もりにする
- 施工記録からの報告書の下書き写真・日報・打ち合わせの記録から、報告書の下書きを作る
- 似た工事の検索工事の種類や建物の条件から、過去の似た工事と気をつけた点を探す
- ベテランの判断の記録人が下書きを直した理由を残し、次の下書きで使う
どの仕事も、使うのは会社にすでにあるデータです。現場の人に新しい入力作業を増やさずに始められます。それぞれの仕事で、AIが使うデータと人が決めることは次のとおりです。
| 仕事 | AIが使うデータ | AIがすること | 人が決めること |
|---|---|---|---|
| 数量拾いと見積もり | 図面、資材の一覧、料金表、過去の見積書 | 数量と長さを拾い、見積もりの形にする | 数量の承認と、金額の確定 |
| 報告書の下書き | 現場の写真、日報、打ち合わせの記録、過去の報告書 | 写真を選び、自社の書き方で文章を下書きする | 現場で見た状態の確認と、提出の判断 |
| 似た工事の検索 | 過去の施工記録、写真、打ち合わせの記録 | 似た工事と、そのとき起きたことを探して示す | 今回の工事にどう生かすか |
| 判断の記録 | 人が下書きを直した内容と、その理由 | 直した理由をルールとして残す | ルールに加えるかどうか |
業務ごとの使い方は、マスターブレインの活用方法でも紹介しています。
図面から数量を拾い、見積もりの形にする
図面から資材の数量を拾う仕事は、1辺ずつ長さを測り、数えて、基幹システムに入力する作業の繰り返しです。建設資材のレンタル会社とのご相談では、FAXで届く図面の縮尺がずれていて、担当者がその都度計算し直していました。拠点ごとに、測り方や入力の仕方が少しずつ違うことも課題でした。
当社は、建設資材のレンタル会社でこの仕事の仕組みを構築しました。全国の拠点で手作業で拾っていた数量を、図面のスキャンからAIが拾い、見積の形まで出します。担当者は確認して承認するだけで、図面から見積までが1件35分から3分になる仕組みです。
建設資材のレンタル会社での構築例
ご提案の中でお見せしている画面では、担当者が数量を手で直すと、AIが「このやり方を覚えますか?」と聞きます。承認すると、直したやり方がルールとして1件増えます。ベテランが図面を見て判断していたことが、普段の仕事の中で1件ずつ記録に残ります。
図面に手書きで書き込まれた指示は消さずに、見積もりの備考に残します。判断が必要な書き込みは、人が確かめます。見積もりの判断をルールにする進め方は、次の記事で詳しく説明しています。
詳しく解説した記事コラム見積もりをAIで自動化するには?自社ルールとベテランの判断を仕組みにする方法見積もりをAIで自動化するには、計算だけでなく、ベテランが条件ごとに変えている判断をルールとして残すことが必要です。進め…図面を読む仕事では、図面と仕様書の食い違いを見つける使い方もあります。たとえば、図面と特記仕様書で板の厚さが違う所を見つけ、設計者への質疑書の下書きにします。当社のセミナー「Claude Codeで組織はどう変わる?AI時代の組織設計」でも、建築の積算でこうした食い違いを見つけ、質疑書にする例をお伝えしました(説明のための例です)。
施工記録や写真から、報告書の下書きを作る
工事の報告書づくりは、写真を選んで並べ、1枚ずつ説明を書き、日報や打ち合わせの記録を見ながら経過をまとめる仕事です。現場の記録はそろっているのに、書類にまとめる作業に時間がかかります。
建物の管理をしている住宅・不動産の会社へのご提案では、オーナー向けの報告書を作る仕組みを考えました。写真をPCに取り込み、担当者が1件ずつ文章を書き、責任者が確かめて差し戻す往復に、時間がかかっていたためです。
ご提案では、写真と担当者のひと言、過去の報告書、差し戻された実例をAIに渡します。写真を選び、文章を下書きするところまでがAIの受け持ちです。撮影の方法や機材は変えないことも最初に決め、現場のやり方を変えずに始められるようにしました。
工事の報告書を作る専用画面(イメージ)
工事報告書の作成
- 工事:外壁の改修(3階建ての事務所ビル)
- 範囲:今週分の写真と日報
- 担当者のひと言:北面の下地に傷みあり
- 報告書の下書き(自社の書式)
- 工程ごとに選んだ写真と説明文
- 確認が必要な点:北面の補修方法が未定
建物の状態をどう見るかという所見は、現場で見た人が書き直します。AIの下書きは、写真の整理と決まった文章までを受け持ちます。報告書の中身を分けて確かめる方法は、次の記事にまとめています。
あわせて読みたいコラム報告書作成をAIで効率化する方法|集計・定型文・所見を分けて確かめる報告書作成をAIで効率化するには、数字の集計・決まった文章・所見を分け、作り方と確かめ方を決めることが大切です。月次報告…過去の似た工事を探して、判断の材料にする
新しい工事の段取りを考えるとき、過去の似た工事で何が起きたかが分かると、準備の抜けを減らせます。ところが、施工記録や写真は工事ごと・担当者ごとに置かれていて、探すだけで時間がかかります。
記録を工事ごとに整理しておくと、工事の種類や建物の条件を入れるだけで、似た工事と、そのとき気をつけた点が出てきます。答えには、もとになった記録が付くので、元の写真や打ち合わせの記録をすぐに開けます。
似た工事を探すやりとり(説明例)
築30年ほどの鉄骨造の事務所ビルで、外壁を改修します。似た工事で気をつけた点はありますか?
似た工事が3件あります。そのうち2件で、足場を組んだ後に下地の傷みが見つかり、補修を追加しています。事前の調査で範囲を広げて確かめた工事では、追加はありませんでした。根拠:施工記録 3件/打ち合わせの記録 2件/現場写真
今回の工事でどう準備するかは、現場の責任者が決めます
特定のお客さまの工事や、実際のAIの出力ではありません。
この使い方は、若手が段取りを考えるときにも役立ちます。若手はベテランに聞く前に、過去の工事の記録を自分で確かめられます。ベテランは、若手が持ってきた案を確かめて直す役に回れます。
あわせて読みたいコラム技術伝承にAIを活用する方法|ベテランの知恵を、若手が現場で聞ける形に残す技術伝承にAIを使うときは、手の感覚で覚える技能と、状況を見て判断する知識を分けて考えます。AIで残せる部分、記録と聞き…
安全と品質の判断は人が持ち、始める仕事を1つに絞る
建設業では、AIの間違いが安全や品質に関わることがあります。そのため、AIに任せる範囲と人が決める範囲を、始める前にはっきり分けておきます。
建設業でのAIと人の受け持ち
- 図面から数量と長さを拾う
- 写真と日報から報告書を下書きする
- 似た工事と、そのとき起きたことを探す
- 図面と仕様書の食い違いの候補を挙げる
- 安全に関わる判断と、品質の合否
- 数量の承認と、見積もり金額の確定
- お客さまや協力会社への連絡
- 現場で見た状態の最終確認
図面や見積もりなど社外に出せない情報は、置き場所と見せる範囲を先に決めます。社内のサーバーの中に置く形も選べ、データを外部のAIの学習に使うことはありません。部署や役職ごとに、見られる記録の範囲も分けます。
現場の打ち合わせを録音するときは、録音することを関係者に伝えます。仕事に関係のない会話は記録しません。何を記録し、誰が見られるかを先に決めておくと、現場の人も安心して使えます。
始めるときは、4つの仕事のうち、いちばん時間がかかっているもの1つを選びます。1つの拠点や1種類の書類で削減できた時間を確かめてから、ほかの仕事や拠点に広げます。進め方は導入支援のページで紹介しています。
マスターブレインを活用した建設業の業務
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
図面・写真・日報・打ち合わせの記録を集め、「どの工事の・誰との・いつの話か」を付けて整理します。人が直した数量や文章の理由は、「ルール帳」に1行ずつ残ります。現場の皆さんは見積もりや報告書の専用画面から使い、承認と最終判断は人が行います(マスターブレインの仕組み)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
図面と施工記録から、書類の下書きを始めませんか?
マスターブレインは、会社のデータ・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずはサービス概要資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- データが整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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