「この件は、あの人に聞かないと分からない」。そう言われる仕事が、社内にいくつあるでしょうか。担当者が休むと確認が止まり、同じ人が同じ質問に何度も答えている。当社がご相談を受ける中でも、業種を問わずよく伺うお悩みです。
この見積もりの条件、どう判断すればいいんだろう…
担当者は今週いっぱい不在です
属人化が起きるのは、担当者の努力が足りないからではありません。ベテランが「なぜそう判断したか」が、どこにも記録されていないからです。この記事では、ベテランの判断を記録してAIで使えるようにし、会社に残していく手順を説明します。
この記事のポイント
- 属人化のいちばんの原因は、ベテランが判断した理由が記録に残っていないこと
- AIに資料を読ませるだけでは足りない。判断の条件・理由・例外をルールとして書き残す
- AIの答えを人が直したら、その内容をルールに追加する。これを続けると、会社に知識がたまっていく
AIで属人化を解消するには、判断の理由を記録する
AIで属人化を解消するには、ベテランが何を見て、なぜそう判断したのかを、AIが読めるルールとして書き残す必要があります。マニュアルや過去の資料をAIに読ませただけでは、担当者の頭の中にある判断までは再現できないからです。
進め方の基本はシンプルです。実際の案件を見ながらベテランに判断の理由を聞き、条件・理由・例外に分けて整理します。そのルールを使ってAIが回答や下書きを作り、人が確認して直します。人が直した内容をルールに追加していくと、使うほどAIの答えが会社のやり方に近づきます。
属人化が進んでいる会社によくある状態
まず、自社の状態を確かめてみましょう。次のうち2つ以上当てはまれば、属人化が仕事に影響している可能性があります。
こんな状態なら、属人化が進んでいます
- 特定の人が休むと、確認や回答が止まる
- 同じ人が、同じ質問に何度も答えている
- 聞く相手によって、答えや判断が変わる
- 過去の資料はあるが、どれを見ればよいかは本人しか知らない
- ベテランが辞めたら困るのは分かっているが、何を残せばよいか分からない
属人化には、大きく2つの種類があります。資料がどこにあるかを特定の人しか知らない場合と、どう判断するかを特定の人しか知らない場合です。この2つは、対策が違います。
| 属人化の種類 | よくある場面 | 対策 |
|---|---|---|
| 資料の場所を、特定の人しか知らない | 最新版がどのフォルダにあるか、担当者しか知らない | 資料を1か所に集め、案件名や日付で検索できるようにする |
| 判断の仕方を、特定の人しか知らない | 「この条件なら例外扱い」という判断を、ベテランだけが知っている | 実際の案件を見ながら理由を聞き、条件・理由・例外をルールとして書き残す |
資料の場所の問題は、資料を整理して検索できるようにすれば、かなり解消できます。一方、判断の問題は、資料をいくら集めても解消しません。AIがいちばん役に立つのは、判断の理由を記録しておき、必要なときにすぐ答えられるようにする場面です。
どの仕事から手をつけるかは、「どれくらい頻繁に聞かれるか」と「判断がどれくらい難しいか」で整理すると決めやすくなります。
属人化した仕事の優先順位
聞かれる回数が多い ↑
- AIの回答に任せやすい規程や手順を見れば答えが決まる質問。資料を整理すれば、すぐに効果が出る
- 最初に取り組みたいよく聞かれるのに、答えるにはベテランの経験が必要な仕事。判断の理由をルールにすると、効果がいちばん大きい
- マニュアルで十分たまにしか起きず、手順も決まっている仕事
- 記録だけ残しておくめったに起きない難しい判断。まずは、どう判断したかを記録しておく
判断が難しい →
マニュアルや情報共有ツールが続かない理由
属人化の対策として、マニュアル作りや情報共有ツールの導入に取り組んだ会社も多いと思います。それでも続かなかったのは、会社や社員のせいではありません。
当社がご相談を受けて業務を整理してきた中で分かったのは、人が手で入力しないと記録がたまらない仕組みは、忙しい時期から止まってしまうということです。ベテランほど忙しいので、手順を書き残す作業はどうしても後回しになります。
続かない仕組みと、続く仕組み
- ベテランが時間を作って、手順を書き残す
- 読む人が、長い資料から答えを探す
- 書いた後に変わったことが反映されない
- 普段の仕事の記録が、自動でたまる
- 質問すると、要点をまとめて答えてくれる
- 人が直したことが、ルールに1行ずつ追加される
もう1つの問題は、資料を検索できても、経験の浅い社員は資料のどこを読めばよいか分からないことです。質問すると、答えの要点と、その根拠になった資料がすぐに出てくる。そこまでできて、ベテランに聞く回数が減ります。
ベテランの判断をAIで使えるようにする4ステップ
判断の属人化を解消する進め方を、4つのステップで説明します。最初から全部の仕事を対象にせず、困っている仕事を1つ選んで始めるのがポイントです。
判断を会社に残す4ステップ
- 選ぶ人に聞かないと進まない仕事を1つ選ぶ
- 聞く実際の案件を見ながら、判断の理由を聞く
- 書き残す条件・理由・例外をルールにする
- 使って直すAIの答えを人が直し、ルールに追加する
聞き取りは、実際の案件を1件ずつ見ながら行うのが効果的です。「普段どうしていますか」と聞いても、本人が無意識にしている判断は出てきません。「この案件は、なぜいつもと違う扱いにしたのですか」と聞くと、判断の条件と理由を話してもらえます。
この案件は、なぜいつもと違う扱いにしたんですか?
納期が短いときは、確認を1回増やさないと手戻りが出やすいんだよ
| 書き残す項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 条件 | どんなときに、その判断になるか | 納期が通常より短い、仕様に追加がある |
| 判断 | どう対応するか | 担当者の確認を挟む |
| 理由 | なぜそうするか | 過去に同じ条件で手戻りが起きた |
| 例外 | このルールを使わないのはどんなときか | 継続取引で条件が決まっている場合 |
| 確認者 | このルールを承認する人 | 部門の責任者 |
特定のお客さまの判断基準ではありません。
見積もりのように、会社ごとに判断が違う仕事でも、同じ手順で進められます。
詳しく解説した記事コラム見積もりをAIで自動化するには?自社ルールとベテランの判断を仕組みにする方法見積もりをAIで自動化するには、計算だけでなく、ベテランが条件ごとに変えている判断をルールとして残すことが必要です。進め…使うほどルールが増えていく仕組みにする
判断のルールは、最初から全部を書き出す必要はありません。普段の仕事の中で、判断の理由が少しずつ記録されていく形にしたほうが、長く続きます。
当社がお客さまにお見せしている画面では、AIの答えを人が直すと「この内容を覚えますか?」と聞かれます。「はい」と承認すると、直した内容が会社のルールとして1件追加されます。ベテランの頭の中にあった判断が、普段の仕事をしながら1件ずつ記録されていく仕組みです。
ルールがたまると、これまでベテランに聞いていた質問に、AIが根拠を付けて答えられるようになります。
ルールがたまった後のやりとり(説明例)
納期が短くて、仕様の追加もある案件です。どう進めればいいですか?
この条件のときは、見積もりの前に担当者の確認を挟みます。過去に同じ条件で手戻りが起きたためです。根拠:判断ルール「短納期で仕様追加がある案件」/似た案件 3件
継続取引で条件が決まっている場合はこのルールの対象外のため、担当者に確認します
特定のお客さまの判断基準や、実際のAIの出力ではありません。
ただし、人が直した内容を、すぐに全部の案件で使うのは避けます。承認した直後は「検証中」にしておき、別の案件でも問題がないことを人が確かめてから使います。ルールを増やすかどうかは、必ず人が決めます。こうしておくと、現場も安心してAIの答えを使えます。
当社の構築実績から
通販・EC事業者の社内QAでは、答えられる人がベテラン2名しかいない状態を解消しました。素材メーカーでは、担当者のPCに散らばっていた開発の記録と報告書を1か所に集め、営業も開発も質問すればその場で答えが分かる状態を目指しました。属人化が解消すると、社内の時間が減るだけでなく、お客さまへの回答も早くなります。
あわせて読みたいサービスマスターブレインの活用方法マスターブレインの業務別の活用方法。企画書・提案書、マニュアル作成、書類作成、社内問い合わせ、集計・分析まで、いまの課題…属人化対策を始めるときの注意点
最後に、進めるときにつまずきやすい点をまとめます。
始める前に決めておきたい3つのこと
- 対象を1つに絞る最初から全部の仕事を対象にすると、聞き取りも確認も終わらない
- 協力してもらう人を決める仕事を知っている人、ルールを確認する人、使い続ける人
- 見せる範囲を決める部署や役職ごとに、見られる情報を分ける
特に大切なのは、最初の仕事で効果が出たことを現場が実感してから、対象を広げることです。効果を感じないまま対象だけが増えると、現場は負担ばかり感じてしまいます。1つの仕事で成果を確かめてから、次の仕事に進みましょう。
また、ベテラン本人の協力は欠かせません。聞き取りの目的は、同じ質問に何度も答える時間を減らして、本人にしかできない仕事に時間を使ってもらうことです。この目的を最初に本人と共有しておくと、協力してもらいやすくなります。当社の導入支援でも、仕事を知っている担当者・ルールを確認する方・使い続ける担当者の3つの役割を、最初にお客さまと一緒に決めています(導入支援の進め方)。
マスターブレインを活用した属人化の解消
マスターブレインは、会社にあるさまざまな情報・業務知識・判断基準を整理し、必要な場面で活用できるように設計する、会社専用のAI基盤です。
あとはよろしく。判断の理由は全部ルール帳に書いてあるよ
分からないときは、AIに聞けば根拠まで教えてくれますね
担当者の経験や判断の理由は、実際の案件をもとに聞き取り、条件・理由・例外に分けて整理します。人が直したことは「ルール帳」に1行ずつ追加されるので、同じことを二度説明する必要がなくなります。担当者が替わっても、仕事のやり方は会社に残ります。仕組みの全体像はマスターブレインの仕組みで紹介しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「あの人しか分からない」仕事は、どれですか?
マスターブレインは、会社の資料・記録・担当者の判断基準を整理し、業務ごとの専用画面から使える会社専用のAI基盤です。まずは資料で全体像をつかむか、御社の業務で相談するかをお選びください。
- 仕組みと、5つの層の役割
- 業務別の活用例と構築実績
- 導入の進め方と、費用の決まり方
- 説明より先に、動くデモをお見せします
- 資料が整理されていなくても大丈夫です
- 2営業日以内に担当者からご連絡します
これまでの構築実績から
- 100%検証208問の正答率地域医師会のチャットボット
- 約1/10書類作成時間訪問介護・障害福祉の事業者
- 35分→3分図面から見積まで建設資材のレンタル
この記事の監修者

AIを活用したシステム開発・業務自動化の専門家。システム開発に10年携わり、GPT-3.5の頃から生成AIを実際の業務に取り入れてきた。基幹システムの刷新から業界に特化したAIサービスまで、本番で動くシステムを設計・構築している。
- AIで業務を効率化し、社員20人で10個以上のサービスを運営
- 教育の流れをAIで自動化し、未経験の5人を3か月で開発者として戦力化
主な登壇
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