TikTok Shop のKGI は売上増加であり、KGI を達成するためのKPI として認知拡大や新規・リピーターの獲得が挙げられます。
良く売り上げているShop ほど明確なKPI を設定し、その目標を達成するための行動に落とし込んでいるものです。
一方、期待している売上を上げられていない店舗は、「とにかく投稿数を増やす」や「気合いと根性で何とかする」といったように、具体的なアクションに落とし込めていない可能性が高いです
TikTok Shop で売上向上を目指す場合、成果指標を理解する必要があります。
こちらの記事では、TikTok Shopで押さえるべきショップパフォーマンス指標をご紹介します。
TikTok Shop で用いられる指標一覧

TikTok Shop にはさまざまな指標が用いられており、これらの理解を深めることでより細かく現状を理解することができます。
売上を上げるためにはまず、設定した目標と現状の数値を理解し、その後なぜ目標と現状に乖離があるのかを考察します。
その考察結果を基に、具体的に改善すべきアクションに落とし込んでいくことで、理論上目標達成が可能となります。
ここで注意していただきたいのが、一回で成功することはまれで、継続したトライ&エラーが重要である、ということです。
A案がダメならB案、B案がダメならC案といったように、ダメなら次の精神で改善に臨みましょう。
とはいえ、TikTok Shop で用いられている指標の意味を理解できなければ、現状および目標を理解することができません。
以下にて、TikTok Shop で用いられているパフォーマンス指標をご紹介します。
LDR
LDR(Late Dispatch Rate:発送遅延率)とは、受注した注文に対して発送遅延が発生した割合を指す指標です。
こちらの数値は低いほど良好な状態であるといえ、遅延が一切なかった場合はLDR は0% になります。
LDR が高くなると商品出品の一時停止または削除、アカウントの一時停止、アカウントの永久停止といったペナルティが課せられます。
これらのペナルティを課せられる前に、TikTok Shop 側から改善命令や注意が寄せられます。
海外ではLDR の割合と発送遅延件数(実数)によってペナルティが課せられた、ということがあります。
また、LDR の数値が高くなるということは、TikTok Shop 全体におけるアカウントの健全性に直接的な悪影響をおよぼします。
アカウントの健全性は「ショップヘルス」や「アカウントヘルス」といったダッシュボードで確認でき、発送パフォーマンスを含む様々な運営指標によって評価されます。
健全性が低下することによって、TikTok 上での露出低下やプロモーションキャンペーンの利用制限、後述するOVL が設定されます。
売上を上げたいけど販売・発送する能力がないと判断された結果といえます。
LDR が向上しやすい時期・タイミング
LDR は大量に受注が舞い込む季節に上がってしまうリスクが高まります。
たとえば、給料日やボーナス支給日、年末年始やクーポン発行時期などが挙げられます。
また、TikTok ならではの要因として、商品紹介した動画がバズったときなどが挙げられます。
有名なインフルエンサーが取り上げたり、テレビで有名人が使っていたりといった、ふとしたタイミングで商品が動くことがあります。
いわゆる「TikTok 売れ」というもので、この時期は新規ユーザーの獲得およびリピーターの囲い込みを行うための、非常に重要な時期といえます。
LDR にこだわらず、購入者との約束を守るうえで、必ず提示した納期に間に合うように出荷・発送する体制を整えておきましょう。
OVL
OVL(Order Volume Limits:注文処理上限)とは、1日に受注できる注文数に上限が設けられ、販売機会が大幅に制限されることを指します。
たとえば、LDH が50% 以上に達した場合、これまでの50% しか販売できなくなるといった措置が取られることがあります。
これはアカウントの停止を促すものではなく、パフォーマンスが低いShop の販売能力を制限することで、TikTok 本体への影響を抑えながら改善を促すメカニズムです。
また、OVL の上限はいきなり50% になるのではなく、初めは警告レベルで90% に抑えられ、徐々に抑制される割合が大きくなります。
最終的にはアカウント停止措置が取られる可能性があるため、制限が掛かっている間に受注・発送の体制を整えましょう。
ポイントに影響を与える行為は発送遅延であり、購入者との約束を守れなかったことにより、OVL のポイントに影響をおよぼします。
発送遅延は単なるクレームにとどまらないだけではなく、TikTok そのものの品質に悪い影響を与える可能性があります。
TikTok を利用したビジネスの存続にかかわる深刻な事態を引き起こすことがあるため、受注件数が増えてきたときは発送・運用体制を見直しましょう。
SFCR
SFCR(Seller Fault Cancellation Rate:販売者起因によるキャンセル率)とは、在庫切れや誤発送といった、Shop 側が原因でキャンセルとなった割合を指します。
具体的には、注文が出荷準備や出荷済みに至る前に、ショップ側の都合でキャンセルされた注文数を一定期間(通常は7日間)で割った数値となります。
たとえば、1週間に100件の注文があり、販売者起因によるキャンセルが2件だった場合、2件÷100件=2.0% となります。
SFCR が高くなるとプラットフォームである TikTok Shop 側から ペナルティ(罰則・制限) を受ける可能性があります。
TikTok Shop では目標値が2.5% と明言されていますが、低いほど良い状態であるといえます。
具体的なペナルティ例として、以下のような制限があります。
- SFCR が 10%以上 30%未満 → 平均日販注文数の 90% までしか販売できなくなる
- SFCR が 30%以上 50%未満 → 70%までに制限
- SFCR が 50%以上 → 50%までに制限
そもそも、SFCR が上がってしまう原因は、下記になります。
- 在庫切れや誤在庫管理により、注文後に「在庫なし」でのキャンセル
- 商品価格の設定ミスや表記ミスで、注文後に価格修正/取り下げ
- 発送準備が間に合わず、プラットフォームの自動キャンセル条件(SLA)を満たさずキャンセル扱いにする
- 他チャネルとの在庫同期の遅れでオーバーセル(oversell)が発生したことによる、後から注文の取り消し
これらは事前にしっかりとシステムを連携したり、在庫・金額管理を徹底したりすることで防ぐことができます。
一方、商品掲載を最優先した結果作業の精度を落としてしまうと、SFCR が上がってしまうリスクが高まります。
参考ページ:TikTok Shop アカデミー公式ページ「売主の過失によるキャンセル率(SFCR) 」
VTR
TikTok Shop におけるVTR(Valid Tracking Rate)とは、出荷した注文に対して、有効な追跡番号(トラッキングナンバー)が正しく登録されている割合を指します。
商品を発送する際、さまざまな運送業者を利用することになりますが、荷物それぞれに追跡番号が設けられています。
この追跡番号は購入者が購入した商品がどこにあるのか、またShop も追跡する際に用いる番号です。
TikTok Shop ではユーザーファーストを最優先しており、そのためにさまざまな要素に透明化を求めています。
発送済みの荷物についても例外ではなく、現在どこにいるのかを透明化することを目的として、こちらのVTR が設定されました。
TikTok Shop では、VTR の目標ラインとして95% 以上の維持を求めています。
追跡可能な割合を向上させることで購入者に安心感・信頼性を与えることができ、新規顧客の獲得およびリピーターの囲い込みが可能となります。
こちらも先述したLDR と同様にアカウントの健全性に影響を与える指標であり、VTR が95% を下回ると違反ポイントが加算されます。
なお、VTR の対象となるものはショップ自身が発送を管理する「Ship by
Seller」を選択している注文に限ります。
参考ページ:TikTok Shop アカデミー公式ページ「有効追跡率(VTR) 」
返金/返品率
TikTok Shop では、購入後の返品・返金に関して、プラットフォームとして明確なガイドラインを設けています。
購入者が返金/返品を要求してきた場合、Shop 側がその申請を確認し、適切な理由であれば受け入れる必要があります。
たとえば、購入者が指定したサイズや個数が異なっていたり、不良品が送られてきたりすることが挙げられます。
また、TikTok Shop では返品不可、または条件付きのカテゴリがあり、それぞれで扱いが異なるため、商品ページにはそれらの情報を明記しておく必要があります。
これらを踏まえ、返金/返品率とは、購入者が返品または返金を要求した内、原因がShop 側にあるものの割合を指します。
TikTok Shop を良好なアカウント状態に保つには、SFRR を できる限り低く保つことが推奨されています。
TikTok Shop では返金/返品率を1.5% 以下に保つことを指定しています。
このことから、TikTok Shop では見せ方だけではなく、販売している商品および発送までのクオリティも重要視しているといえます。
販売しておわりではなく、購入者の手元に良品が届いて問題なく使えることが、真のゴールといえるでしょう。
参考ページ:TikTok Shop アカデミー公式ページ「販売者の責任による返品/返金 率」
NRR
NRR(Negative Review Rates:否定的なレビュー率)とは、TikTok Shop における「ショップ全体の健全性・パフォーマンス評価」を数値化したスコアです。
過去90日間のショップの実績をもとに算出され、スコアのレンジは0~5点となります。
このスコアはShop だけではなく、購入者やクリエイターも参照できます。
NRR はショップの「商品満足度」「サービス品質」「顧客体験」の総合的なバロメーターともいえるもので、低評価が多ければ、それだけ顧客の不満が多いと見なされます。
口コミサイトや検索エンジンなどにも類似する評価項目が存在しており、ユーザーのなかにはレビューを参考にして購入に至る人がいます。
近年ではその傾向は強くなっており、レビューが低いと新規購入者のコンバージョンが落ちる、リピートが減る、レビューを見た見込み客が離脱する、などの悪影響があります。
また、ネガティブレビューが多くなるとショップや商品に対して露出制限や広告・アフィリエイト枠の利用停止といったペナルティを課せられることがあります。
参考ページ:TikTok Shop アカデミー公式ページ「否定的なレビュー率(NRR) 」
TikTok Shop ガイドラインとペナルティ回避

このように、TikTok Shop では動画の品質だけではなく、配送や商品についても注意しなければなりません。
ライブコマースを実施できるプラットフォームといってもEコマースの一環であることから、高品質な商品および配送サービスを提供する必要があります。
低品質なサービスを提供し続けていると先述したようなペナルティを課せられることがあります。
以下にて、TikTok Shop ガイドラインとペナルティ回避について解説します。
禁止商品・規制対象の確認
まずはTikTok Shop の公式ガイドライン に記載されている、禁止商品に目を通しましょう。
下記はTikTok Shop で販売を禁止されている商品です。
- 武器・弾薬・危険物
- アルコール、タバコ、電子タバコ等のニコチン製品
- 麻薬、違法薬物、および薬物関連の器具・用品成人向け商品
- 危険物/有害物質
- 偽ブランド品・海賊版
- 動物、生き物、または絶滅危惧種由来の動物製品
- 中古品・セカンドハンド商品
- 医療機器・処方薬・未認可サプリメント
- ギャンブル用品/宝くじ関連商品、またはギャンブルを助長するアイテム・サービス
- 政治的・差別的・暴力的・過激思想を助長する商品、または不適切/攻撃的な内容の商品
これらに抵触する商品を取り扱っている場合、残念ながら販売することができません。
そのため、TikTok をプロモーションツールのひとつとして割り切って運用しましょう。
ペナルティ事例と改善策
ペナルティ事例については先述の通り、軽微な違反から始まって出荷制限、最悪の場合アカウント停止になります。
本来、これらはマイナスポイントが積み重なってもたらされますが、場合によっては一夜にして停止寸前に追い込まれることがあります。
たとえば、偽ブランド品を販売した場合は一発でアカウント停止となるほか、偽レビューも規制対象に含まれます。
Shop が実際に複数アカウントを用いて自分のショップで購入を行い、売上実績を水増ししようとしたところ、プラットフォーム側に不正と判断され、売上の暫定停止およびアカウント無期限停止の対象になった、というものです。
評価を落とさずに売上を上げるには、地道な努力しかない、という事例となりました。
評価が高くなるとどうなる?

では、法令を遵守してTikTok Shop のルールに従い、納期を守って良質な商品を発送し続けるとどうなるのでしょうか。
こちらでは、評価が高い状態を維持することによって得られるメリットをご紹介します。
商品の露出が増える
まず、ルールを守っているShop は良好なShop であるとTikTok 側が判断するため、商品の露出が増加します。
商品の露出が増加する、つまり多くのユーザーに表示されることで、購入数・購入率向上が期待できます。
このときに注目してほしいのが、興味・関心があるユーザーに商品が紹介されるということであり、良質なサービスを提供し続けることによって、TikTok が味方になってくれて表示回数が増えて、結果として売上が増加するという好循環が生まれるのです。
しかし、特需やTikTok 売れによって急に受注が増加し、発送遅延が発生しないように注意しましょう。
販促の機会が増える
評価が高いショップは、TikTok Shop 内で提供される各種プロモーション対象に選ばれやすくなります。
クーポン配布やタイムセール、特定イベントへの参加条件として、過去の評価が判断材料となることがあります。
また、ライブ枠や広告枠でも優遇される傾向があり、セール期間中やキャンペーン時に追加の露出機会を得やすくなります。
このような販促チャンスの増加は、売上アップに直結します。
顧客からの信頼を獲得できる
高評価のショップは、顧客からの信頼度が高まります。
SNS での口コミやレビュー投稿が増えやすく、レビュー数は売上に直接影響します。
良好なレビューは新規顧客の購入意思決定を後押しし、結果として購入率向上が期待できます。
信頼性の高いショップとして認知されることで、リピーターの獲得やブランド価値の向上も期待できるでしょう。
ペナルティリスクを減らせる
ショップ評価が安定して高い状態は、ペナルティリスクの低減にもつながります。
低評価や指標悪化は、違反判定の際にリスク要因としてカウントされる場合があるため、安定運営を心がけることで、長期的にペナルティ率を抑えられるだけでなく、ブランドの蓄積による長期的メリットも得られます。
評価の高いショップは、プラットフォーム内での信頼性も高く、安心して運営できる環境が整います。
TikTok に限らず、Google など検索エンジンも高品質な情報やサービスを提供しているアカウント・ページは、より多くの人に見てもらいたいと考えています。
これはプラットフォームそのものの品質に関わる要素であり、プラットフォームの信頼にも大きく影響します。
信頼できる場所に人が集まってくるのはビジネスの根幹ともいえる要素のため、他社との差別化を図るためにも提供するサービスの品質にはこだわりましょう。
おわりに

こちらの記事では、TikTok Shopで押さえるべきショップパフォーマンス指標をご紹介しました。
TikTok Shopで売上を伸ばすには、ショップパフォーマンス指標を理解し、目標達成に向けた具体的な行動に落とし込むことが重要です。
LDRやOVL、SFCR、VTR、返金/返品率、NRRなどの指標を適切に管理することで、発送遅延やキャンセルを防ぎ、顧客信頼を獲得できます。
評価が高まると商品の露出や販促機会が増え、ペナルティリスクも減少します。
継続的な改善と正確な運営で、安定した売上向上が可能です。