ライブコマースは視聴者と企業の双方でコミュニケーションを図りながら販売ができるサービスであり、近年さまざまな企業・店舗で注目されています。
視聴者はその場で疑問点を伝えられ、配信者はその質問をその場で回答できるため、高い満足度が期待できます。
しかし、ライブコマースはやれば売れるというわけではなく、場合によってはなかなか売りにくいことがあります。
こちらの記事では、ライブコマースで売れない原因と企業が改善すべきポイントを5つご紹介します。
ライブコマースで売れない原因

いざライブコマースを実施しても、なかなか売れなかったり、期待しているほど視聴者が集まらなかったりして、失敗することがあります。
この失敗には一定の法則が存在しており、これらを解消することで売れる可能性を向上させられます。
まずはライブコマースで売れない原因を見てみましょう。
ターゲットがあいまい
ライブコマースに限らず、商品やサービスには必ずターゲットとなる人がいるものです。
商品の企画段階で「誰に向けた商品なのか」「どのような課題を解決できるのか」を決めたうえで開発・製造をしているはずです。
ライブコマースも同様で、商品のターゲットと視聴者が合致していない場合、購入に至らない可能性が高くなります。
ターゲットがあいまいだと判断した場合、過去のデータから購買意欲の高い層、普段からそのカテゴリーに興味がある層、あるいはライブ配信に反応しやすい層に分けてみましょう。
各層のターゲットをペルソナとして設定することで、困りごとや解決したい課題が明確になるはずです。
配信者の熟練度不足
ライブコマースはリアルタイムで配信者が話をしているため、ある程度の熟練度が求められます。
よく噛んでしまったり、話す内容を忘れてしまったりする場合、残念ながら練習不足と言わざるを得ません。
また、何回・何十回も練習しても、用意している台本に情報がまとまっていなかったり、商品知識がなかったりする場合、練習以前にそれらを見直す必要があります。
先述の通り、ライブコマースに参加する視聴者は課題を解決したいと思っている人が含まれているため、前提として課題を解決する・有益な情報を伝えることに集中するべきです。
ライブ配信に慣れていない配信者で良く見受けられるのは、焦りのあまりコメントを見逃してしまうことです。
コメントが贈られるということは視聴者が商品に興味を持っていることだといえるため、配信者は応えなければなりません。
こちらについては練習や回数をこなすことで解決できるため、定期的にライブ配信を実施しましょう。
説明が長すぎる
限られた時間で商品の魅力を最大限に伝えるために、ついつい説明が長くなってしまうことがあります。
しかし、長すぎる説明は視聴者が飽きてしまう要因となるため、集中力が切れて離脱の可能性が高くなってしまいます。
逆の立場では、第三者の話を延々と聞き続けると、眠くなったりほかの作業をしたいと考えてしまったりするのではないでしょうか?
ライブコマースで視聴を継続してもらい、購入してもらうためには、飽きがこない構成を練る必要があります。
商品紹介についてはスペック・素材・使い方・注意点といった要点をまとめ、順序立ててスムーズな流れで説明するようにしましょう。
台本を作成する際、まずはその商品で最も伝えたいポイントと最大の魅力を描いてみることが重要です。
集客力不足
どれほど台本を作り込んでも、どれだけ質が高いライブ配信をしても、視聴者が集まっていなければ売上にはつながりません。
一説によると、日本におけるライブコマースは2017年頃から始まったといわれています。
2020年にはコロナウィルスの影響により外出を控えていたことから、大手企業が続々と取り入れるようになったといわれています。
2025年にはTikTok が「TikTok Shop」というライブコマースに関する機能をローンチしたことから、徐々に市場が拡大しています。
しかし、ライブコマースの認知はまだ発展途上であり、日本ではあまりなじみがないビジネスモデルである可能性が考えられます。
人というものは不慣れなものや行動に抵抗があるため、ライブコマースに参加してみたいと考えている人が少ないかもしれません。
それでも、ライブコマースに興味を持っている視聴者は存在しているので、SNS やホームページなどで積極的に告知しましょう。
配信直前だけではなく、事前告知やリマインド、フォロワーへの通知などを実施することで、はじめて集客ができます。
導線設計
何度も練習して、告知をして良質なライブ配信を実施しても購入に至らないときは、購入までの導線に問題があるかもしれません。
ライブコマースは視聴しているだけでは意味がなく、いかに「今買いたい」と思ってもらい、かつ「すぐ買える」ような仕組みを用意するかが重要です。
たとえば、ライブ中に購入ボタンやカートへのリンクを表示することで、その場で購入を促せます。
質よりも頻度を優先すると、認知は拡大しても売上にならない可能性があるため、導線設計も事前に検討・改善しておくと良いでしょう。
企業が改善すべき対策

先述の通り、ライブコマースは配信するだけでは意味はなく、視聴者が行動してくれてはじめて価値がある施策です。
こちらでは、ライブコマースを実施する企業が改善するべき対策をご紹介します。
ターゲットにあわせて企画する
ライブコマースを始める際、まずは「誰に商品や情報を届けたいか」を明確にしましょう。
配信内容や企画はターゲットに応じて都度変更する必要があり、視聴者全体といったくくりではなく、具体的にペルソナに沿って構成します。
たとえば、「普段そのブランドを利用するコアファン」や「ECで購入経験はあるがフィット感に不安を持つ層」、「ライブ視聴で商品情報を得たい潜在層」など、複数のターゲットを想定することで、それぞれのターゲットが興味を持ってもらえるようなアプローチを設計できます。
こうした深い準備があると、配信内容、トーン、紹介する商品の選定、演出などの“ライブ設計”がブレず、視聴者の共感や購買につながりやすくなります。
ユーザー目線で丁寧に紹介する
ライブコマースで陥りがちな問題として、ユーザー目線で企画・構成ができていないことが挙げられます。
ビジネスの場ではプレゼンをすることがあると思いますが、自社商品ばかり紹介するのではなく、顧客が臨むものや解決できる課題などを端的に伝える方が、購入に至る可能性が高くなります。
たとえば、アパレルの場合は生地の質感や着たときのイメージ、サイズ感などを知りたがっていると考えられます。
実際にモデルが着用し、さまざまな角度や遠近で撮影することによって、購入への安心感が増し、購入のハードルが下がります。
また、感情に訴えるためには、ブランドや商品のストーリー・背景を伝えるのも良いでしょう。
なぜその商品を作ったのか、制作時の裏話など、普段知ることができない情報を伝えることで、「そんな背景があったのか」と思われ、親近感が増すと考えられます。
視聴者とのやりとりに時間を割く
ライブ配信を実施する際、ユーザーとのやり取りに時間を割くようにしましょう。
商品にもよりますが、紹介には数十分もかからないことがあります。
1時間のライブ配信の場合、残りの時間をすべて視聴者とのやり取りに割くべきです。
視聴者からは「使用上の注意点は?」「他社とは何が違う?」といった質問を寄せられることがあります。
これらの質問に対して的確にリアルタイムで応えることにより、信頼感や購入の後押しとなります。
また、視聴者の混乱を避けるために、複数の商品を紹介するのではなく、基本的には1配信で1商品にとどめておきましょう。
データを分析して効果を検証する
ライブコマースは一回やって終わりではなく、配信後の振り返りと改善が重要です。
実施後に視聴数やコメント数、クリック率、カート遷移率、購入率などの定量データを取得し、それぞれにどのような傾向があったかを分析します。
どの時間帯に離脱が多かったか、どの紹介商品で最も反応があったか、どのようなコメントが購買につながったかなど、見えてくる情報があります。
これらは次回以降の配信の改善ポイントとなるため、ケーススタディを蓄積して継続した改善が可能となります。
また、分析時にはデータだけでなく、配信者・スタッフの振り返りやコメントやアンケートといった視聴者の声も取り入れて、質的な改善につなげることで、より効果の高いライブコマース運営が可能になります。
アーカイブを残す
ライブ配信はその場限りではなく、終了後もアーカイブを資産として残すことが重要です。
多くのライブコマースではリアルタイム視聴購入だけでなく、後日アーカイブを見た人が購入するケースも多いと報告されています。
そのため、配信後は録画をECサイトや商品ページ、SNSなどで見られるように整備し、いつでも見返せるようにしておくことで、新たな購買機会やブランドとの接点を生み続けられます。
また、ライブ後にショート動画などを切り出してSNSで再利用することによって、さらなる拡散や認知拡大につなげるのも有効です。
日本でライブコマースが流行らないといわれている理由

先ほど少し触れましたが、日本では海外ほどライブコマースが流行っていない状態です。
その要因はさまざまですが、下記は一般的に日本でライブコマースが流行らないといわれている理由です。
配信者・企業が少ない
まず、ライブで商品を紹介・販売する「ライバー」や、企業の参入がそもそも少ない点が挙げられます。
日本では配信によるリアルタイム販売に慣れている人や、ライブコマースに特化したインフルエンサーが少ない状態です。
結果として、魅力あるライブ配信が少なく、視聴者側も「見慣れない」「怪しい」と感じやすくなっていると考えられます。
プラットフォームに改善の余地あり
こちらは視聴者や配信者起因の問題ではなく、ライブコマースを支えるプラットフォームの成熟度も、日本ではまだ不十分だと考えられます。
海外、特に中国ではライブ販売に特化したアプリや使いやすいUIが整備されていますが、日本ではそのようなプラットフォームは発展途上です。
日本の消費傾向が変わった
また、日本人の消費傾向そのものが、ライブコマースのような衝動買いツールと相性がよくない可能性が考えられます。
ニュースなどで「物価高騰」や「賃金問題」が取りざたされているため、昨今の日本では消費を抑える傾向にあるのです。
欧米や中国に見られたような「その場で買う」「ライブを機に買う」といった消費行動は、日本では比較的慎重で、購入前によく調べ、比較してから決める傾向が強いことも要因と考えられます。
海外のライブコマース事情

ライブコマースは海外、特に中国や台湾、アメリカなどで急速に定着しつつあります。
中国ではライブコマースの始まりからわずか5年で市場規模が数十倍に拡大し、今後日本円で数十兆円~数百兆円規模になると予測されています。
台湾ではライブ配信による販売が当たり前となり、視聴者数の大幅な増加や主婦層を中心とした日用品・化粧品・衣料などBtoC商品の人気が高まっています。
市場規模は日本円で数千億円であり、こちらも中国に迫る勢いで成長しています。
米国をはじめとした欧米でも、Instagram やAmazon などを活用したライブコマースやショッピング機能の実装が進み、徐々に浸透しています。
まとめ

こちらの記事では、ライブコマースで売れない原因と企業が改善すべきポイントを5つご紹介しました。
ライブコマースが売れない背景には、ターゲット設定の曖昧さ、配信者のスキル不足、説明の冗長さ、集客力の弱さ、購入導線の不備といった共通課題があります。
これらは事前の企画設計とトレーニング、ユーザー視点での情報提供、適切な告知、購入しやすい導線の整備で改善できます。
また、配信後のデータ分析やアーカイブ活用も効果最大化に不可欠です。
一方、日本でライブコマースが普及しにくいのは、配信者や企業の参入が少なく、プラットフォームの成熟度が低いこと、慎重な消費傾向が強いことが理由とされています。
中国・台湾・欧米では市場が急拡大しており、日本でも効果的な運用次第で成長余地は大きいといえるでしょう。