ライブコマースは動画を配信するプラットフォームとEコマースが融合したような販売形式であり、ビジネスの新たな手段として注目を集めています。
商品を紹介しつつ、リアルタイムで送られてくる視聴者の質問に答えるため、コミュニケーションを図りやすい販売形式であるといえます。
これからライブコマースを取り入れたいという企業は多いものですが、成功するためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。
こちらの記事では、企業がライブコマースを導入して成功に導くためのポイントをご紹介します。
ライブコマースで成功するためのポイント

ライブコマースはただ配信しているだけでは成功しにくいです。
ここでいう成功は売上の増加だけではなく、認知拡大や顧客データ収集など、企業・店舗によって決められている目標の達成になります。
以下にて、ライブコマースで成功するために押さえておくべきポイントをご紹介します。
視聴者に有意義な情報を発信する
ライブコマースで成功するには、ただ商品を見せて買ってくださいと言うだけでなく、視聴者が知りたい情報を発信することが重要です。
消費者は商品に興味を持ったうえで動画を視聴していると考えられますが、購入前に解決したい疑問や課題が残っているとも考えられます。
商品の特徴や使い方、他製品との比較、使うシーンの具体例、裏話やストーリー、使用上の注意点などが知りたい情報になります。
このような情報を交えて配信することで、視聴者の興味と信頼を引き出せます。
視聴者がコメントで質問をしてきたときは、テンプレ的に答えるのではなく、丁寧かつ具体的に応じることが重要です。
「この人の話なら信頼できる」「なるほど、そういうことか」といった印象を持ってもらうことで、徐々に購入のハードルを下げられます。
そのため、ライブコマースは単なる広告や配信動画ではなく、体験や教養を伝える場としてライブを価値あるものにできます。
上記のように視聴者に取って有益な情報を提供できれば、いち視聴者としてだけではなく、将来的にファンやリピーターになってくれる可能性が高まります。
特に、まだ世の中に流通していない新商品や複雑な仕様の商品のほか、よく購入されている定番品でも「なぜこの商品を選ぶと良いのか」を丁寧に説明できるライブは、視聴者の納得感を高められます。
また、ライブコマースの醍醐味である「リアルタイムの双方向性」を活かし、視聴者の反応や疑問に応えることでライブらしさを演出でき、視聴時間や顧客との関係性も自然と高まります。
このように「有意義な情報+コミュニケーション」がセットになっていることが、ライブコマースの人気が高くなっている理由といえます。
定期的に配信する
ライブコマースで成果を出すためには、単発で終わらせるのではなく週単位や月単位など、継続して配信することが重要です。
たまにしか配信しないと視聴者は「次はいつだろう?」と関心を失ってしまい、ほかのメーカーに流れてしまう可能性があります。
定期的に配信することによって視聴者との接点を維持しやすく、ブランドや商品への親近感・信頼感を育みやすくなります。
定期的な配信は、新しい情報や新たな発見があるかもという期待感を視聴者に持ってもらえます。
また、配信を重ねるごとにライブの構成やトークのテンポ、見せ方、商品選びなどを改善できるため、質が高い動画を配信できるようになります。
質が高い動画は結果としてファンをつかみやすくなりますが、そのためには継続的な配信が重要です。
頻度が高いとアルゴリズムやSNS での露出機会も増えやすく、新規視聴者が流入するチャンスが増加します。
一方、毎日配信すると情報の新鮮さがなくなってしまう可能性があり、動画に飽きられてしまう可能性がある点には注意が必要です。
そのため、ライブ配信を実施する際は具体的にいつ・どれくらいの頻度で配信するのかをスケジューリングしておきましょう。
マーケティングミックスの実施
ライブコマースで成功するためには、ほかのマーケティング手法と組み合わせて実施するマーケティングミックスを考えておきましょう。
たとえば、配信前後にSNS で予告やフォローアップを行ったり、既存のECサイト(Eコマースサイト)やメールマガジン、広告と連携させたりすることが挙げられます。
売上増加やファン獲得に限らず、ライブ配信ではより多くのユーザーを集めることが成功につながるため、積極的に呼び込みましょう。
また、ECサイト側での購入導線の整備、在庫管理、顧客データの取得や分析など、通常のEC運営と統合することも重要です。
たとえば、ライブコマースツールを使って分析した視聴行動から、どのタイミングで離脱が起きやすいか、どの商品が反応良かったかを把握して、次回の配信内容や販促戦略に活かすと効果的です。
これらの情報を知ることでライブ配信の質だけではなく、ECサイトの改善点も見つけることができます。
また、社内スタッフでは認知不足だと判断した場合、インフルエンサーの起用も視野に入れましょう。
インフルエンサーを適切に起用することで、新たなファン層にリーチしたり、既存ファンとの関係を強化したりすることができます。
AISCEASについて
マーケティングにおける購買行動モデルとして、よく参照されるのが「AISCEAS」というフレームワークです。
AISCEAS は消費者が取る下記の行動の頭文字であり、一連の流れに沿っていることがお分かりいただけると思います。
| 頭文字 | 行動 | 詳細 |
| A | Awareness(認知) | ライブ配信の告知やSNS投稿、広告などで視聴者にブランドや商品を知ってもらう段階 |
| I | Interest(興味) | ライブやコンテンツで商品やブランドの魅力を伝え、視聴者の関心を引く |
| S | Search(調査) | 配信中の説明やQ&A、商品詳細、レビューなどで視聴者の疑問を解消し、理解を深める |
| C | Comparison(比較) | 複数の商品を比較したり、他ブランド品との違いや優位性を説明したりすることで、購入の合理性を高める |
| E | Effect(効果) | リアルタイムのデモや使い方の紹介、購入者の口コミ、ライブ限定の割引などで、購入するべき理由を説明 |
| A | Action(行動) | 購入を促し、購入してもらう |
| S | Share(共有) | ライブ後の感想やSNSでの拡散、レビュー投稿を促進して、より多くの顧客を呼び込む |
このように、AISCEAS の各段階を意識してライブを設計することによって単発で終わらず、購買体験全体をスムーズに導き、「認知 → 購入 → 拡散」のサイクルを回しやすくなります。
ライブコマースは、このモデルをそのまま体現できる販売チャネルといえるでしょう。
ライブコマースの企画・コンテンツ作りのポイント

ライブコマースは配信前の準備と練習が、成果の大半を決定するといっても過言ではありません。
練習やリハーサルを繰り返して練習を重ね、課題を抽出して改善していくことで、多くの視聴者が流入して目標を達成しやすくなります。
また、練習前の企画・コンテンツ作りにもこだわりましょう。
こちらでは、ライブコマースの企画・コンテンツ作りのポイントをご紹介します。
自社の強みを理解する
ライブコマースだけではなく、ビジネスの観点でも自社の強みを明確に理解することが重要です。
他社よりもデザインが優れていたり、機能が豊富だったりといった、市場に存在する類似商品と比較して何が強いのかを明確にしましょう。
その強みはライブコマースの企画に活かすことができ、差別化を図るうえで欠かせない要素といえます。
ほかにも、SNSでの発信力が強かったり、映像映えする商品を扱っていたり、商品知識が豊富なスタッフがいたりといったことが強みになります。
映像映えする商品や特徴あるアイテムは、ライブで見せることでその魅力が伝わりやすいため、ライブとの親和性が高いです。
商品についての深い知見を持つスタッフが紹介・説明をすることで、視聴者に安心感や信頼感を与えられるでしょう。
また、自社ECサイトや既存の顧客情報を持っていれば、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理) を利用することでライブの告知から誘導までをスムーズに行えます。
このように、自社の強みをふまえたうえで企画や商品、出演者を選定することで、自社にしかできないライブコマースを設計することができます。
視聴者の声や反応を取り入れる
ライブコマースの大きな強みのひとつは、視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを図れることです。
配信中のコメントや質問は、視聴者のリアルな声ともいえるもので、この声や反応を商品とライブコマースの企画やコンテンツに取り入れることで、視聴者のニーズに沿った配信内容を作れます。
視聴者から「こういう情報知りたい」「こういう使い方が気になる」といった声があれば、ライブコマース中に応えましょう。
また、ライブコマースの特性を利用して、デモンストレーションを行ったり、比較紹介をしたり、使い方のコツを紹介したりすることが可能であり、このような配信は結果として視聴者の満足度や信頼感が高まります。
ライブ後にはコメントや購入データ、離脱タイミングなどを振り返り、次回の企画改善につなげるのも良いでしょう。
視聴者の声を反映させることで、通常のEコマースのように一方通行のビジネスではなく、視聴者が参加できるコンテンツとなり、ファン化やリピーター獲得にもつながりやすくなります。
積極的なコミュニケーションを心がける
先述の通り、ライブコマースでは映像と音声だけでなく、視聴者とのコミュニケーションをどれだけできるかが重要になります
コミュニケーションは信頼関係構築には不可欠な要素であり、質問や疑問に対して最適な回答を用意することで、良好な関係を築き上げられます。
配信中にコメントや質問を呼びかけ、それに応じる時間をしっかり取ることで、ライブらしさや親近感、信頼感を演出できます。
特に、コメントしてくれた人の名前(ニックネーム)で呼びかけたり、視聴者の反応にリアクションしたりすると、「自分に話しかけられている」「このライブは自分も参加できる」という感覚が生まれ、エンゲージメントが高まります。
同様の件でいうとラジオが挙げられます。
ラジオでは送られたはがきやメッセージを読む際、ラジオネームや名前を言ってからお礼を伝え、その後にメッセージを読みます。
リスナーは自分の名前とメッセージを読まれただけではなく、そのメッセージに対して返答をしてくれるため、非常に満足度が高く、「次回も送ってみよう」という気持ちになります。
ライブコマースでも同様であり、名前を呼ぶことでお互いの距離感を一気に縮めることができます。
これがライブの没入感やライブ感、そして視聴継続や購入につながる重要な要素です。
また、商品の説明だけでなく、背景ストーリーや使い方の提案、生活シーンへの落とし込みなど「会話型」「ストーリー型」で展開することで、視聴者を飽きさせず、購買心理に訴えることが可能になります。
インフルエンサー・タレントの起用も視野に入れる
自社スタッフだけでなく、視聴者を多く抱えるインフルエンサーやタレントを起用するのも、ライブコマースにおける戦略のひとつとして取り入れられることがあります。
新規顧客の獲得やブランド認知の拡大を狙う段階では、多くのファンを持つインフルエンサーの影響力は大きな武器になります。
インフルエンサー・タレントを起用する際の注意点として、単に「フォロワーが多いから」という理由で選ぶのではなく、自社商品やターゲットとインフルエンサーのフォロワー層がマッチするかを慎重に見極めることが挙げられます。
たとえば、アパレルならファッション系インフルエンサー、コスメなら美容系インフルエンサーというように、商品の性質とインフルエンサー・タレントの強みを合わせることで、商品の魅力や特徴を伝えやすくなり、説得力が増します。
また、インフルエンサーを使うことで一度に多くの視聴者を集められる一方、コストがかかる点にも注意しなければなりません。
そのため、インフルエンサー・タレントを起用する際は自社スタッフとバランスを取りつつ、通常回は自社メンバー、大規模なイベントや商品ローンチのときはインフルエンサーを起用する、といったように使い分けると良いでしょう。
ライブコマースの成功事例

ライブコマースで成功するには、定期的に実施してケースや学びを得ることが重要です。
しかし、最短で成果を得たい場合は、すでに成功している企業や店舗の事例を参考にすると良いでしょう。
こちらでは、家電メーカー、化粧品メーカー、アパレルメーカーの観点から、ライブコマースの成功事例をご紹介します。
事例1:家電メーカーの場合
ある健康家電メーカーでは、新製品をライブコマースで紹介した結果、大きな成功を収めることができていました。
成功ポイントは「インフルエンサーの起用」「ライブ限定価格やクーポンの提示」「マーケティングミックス」です。
まず、料理家インフルエンサーを起用し、実際に新製品を使って料理を作るデモンストレーションをライブで実施。
実演を通じて商品の使いやすさや仕上がりの良さを視覚・体験として伝えたことで、視聴者の商品の理解が深まりました。
そして、ライブ限定価格やクーポンの提供、コメントした視聴者に対してインフルエンサーアカウントから自動DMで購入ページやクーポンを送るなど、購買導線を丁寧に設計しました。
結果として、ライブ配信とその後のアーカイブを通じて、総再生回数が数万回を突破し、通常の販売チャネルでは得にくい高単価商品の販売成功に結びついたのです。
また、集客の際には各種SNS やホームページなどを利用しており、さまざまなユーザー層にアプローチをかけていました。
この事例では体験→信頼→購入の流れをライブを通じてスムーズに設計したこと、そしてライブ後のアーカイブ活用やDM によるフォローで購買ハードルを下げた点にあります。
テキストや画像だけでは伝わりにくい使い心地や、製品が持つ価値をライブで伝えることが効果的だと示した事例といえるでしょう。
事例2:化粧品メーカーの場合
化粧品・コスメブランドとライブコマースは非常に相性が良く、実際に成功した例が複数あります。
たとえば、あるスキンケアブランドではライブ配信を通じて視聴者と直接交流し、リピーター・フォロワー・ファンの獲得に成功しました。
この事例の成功ポイントは「実演」「視聴者に積極的に参加してもらう仕組みづくり」「アフターフォロー」です。
配信中にコメントをもらい、CRM や人力などにより、その後ライブ視聴者に対してDMでフォロー。
また、購入者が自分で撮った写真や動画、口コミを投稿してもらうよう促すことで、UGC(ユーザー生成コンテンツ)も集まりました。
UGC は新たなプロダクトの開発やメーカーでは思い浮かばなかったような使い方の参考になるため、メーカーのなかには各種情報を集めているところがあります。
このような取り組みを実施した結果、数千件にものぼる顧客情報を獲得し、ファンの育成とブランドの底上げにつなりました。
また、コスメや化粧品では「見た目」「使い心地」「変化」が重要な要素となります。
ライブを使って実演したり色味やテクスチャーを見せたり、リアルタイムで質問に応答したりすることで、消費者の不安や疑問を解消し、購入のハードルを下げることができます。
ライブ中に撮影した動画をアーカイブとして送付するだけではなく、ハイライトシーンを切り抜いてショート動画やリールとして再活用できます。
これらの動画はライブを見逃した人やもう一度見返したい人に対して有効な動画であり、ライブ後の購入やファン獲得に貢献してくれます。
コスメ・化粧品ブランドは各種SNS との親和性も高いため、それぞれに動画を投稿するのも良いでしょう。
このように、化粧品メーカーのライブコマースでは、単なるセールスではなく「コミュニケーション」「体験」「コンテンツの再活用」を掛け合わせることで、ブランドのファン化やデータ獲得、そして継続購買につながる好循環を作り出しています。
事例3:アパレルメーカーの場合
衣類は試着感やコーディネートの提案をリアルタイムで見せられる点が強みであるため、アパレル業界もライブコマースと非常に相性の良いジャンルです。
当事例の成功ポイントは「継続すること」「購買導線の整備」「実際に着用する」になります。
あるブランドでは、初めはライブ配信のやり方がわからず試行錯誤していたものの、継続的にライブコマースを行うことで成功に結びつけました。
ライブコマースの結果として、ライブ配信で紹介した試着アイテムが即完売しただけではなく、ホームページ上にLP を制作し、ライブのたびに配信とECを連動させる形で購買導線を整備しました。
さらに、配信を継続していくことでブランドの世界観やコーディネート提案の質も深まり、顧客との信頼関係も構築されていきました。
現在は毎週のようにライブ配信を実施し、ライブ→ ECサイト → 購入という流れが定着しています。
アパレル業界では商品のサイズ感や質感、着用イメージが重要なため、ライブ配信でモデルやスタッフが実際に着用して見せることで、オンラインでの購入ハードルを下げられるのが大きなメリットです。
さらに、コーデ提案・季節提案・スタイリング相談などをライブで行えば、顧客との距離も縮まり、ファン化やリピート購入にもつながりやすい流れの構築に成功しました。
「LTV」について

視聴者がライブコマースで商品を購入する際、「これを購入してどのような効果が得られるのか」「満足できるのか」といった気持ちで視聴されていることがあります。
疑問を解決するために、ライブ配信中に質問をして回答を求めており、納得したうえで購入に至ります。
企業や商品を気に入った視聴者はリピーターやファンとなり、継続的な購入につながります。
ここで、継続的な購入について「LTV」という指標が用いられます。
LTV(Life Time Value)は、顧客が企業と関わる期間にわたって生み出す総利益を示す指標です。
単発の売上ではなく、リピート購入や継続利用、追加購入なども含めた「長期的な価値」を測ることができ、どの顧客に注力すべきかやマーケティング施策の優先順位を判断する際に役立ちます。
LTV の重要性
現代の市場では新規顧客の獲得コストが上昇し、既存顧客の維持が重要性を増しています。
LTV を把握することで、広告費や販促費の投資効率を数値で評価でき、どのチャネルや施策が長期的に利益を生むかを判断できます。
単なる売上や視聴者数だけに頼らず、顧客一人ひとりの価値を軸にした戦略が可能になります。
LTV 向上の方法
LTVを高める方法にはアップセルやクロスセル、定期購入制度の導入、アフターフォローの強化、CRM による個別コミュニケーションなどがあります。
これらを実施することによって顧客の購入頻度や単価を増やすだけではなく、離脱を防ぐことができます。
また、ライブコマースは視聴者と直接コミュニケーションを図れるため、購入後のフォローや限定情報の提供、コミュニティ形成などでファン化を促進しやすい特徴があります。
その結果、長期的に顧客に与える価値を育てる場となるため、LTV 向上に有効に作用します。
ライブ配信を通じてブランドや商品の魅力を伝え、顧客との信頼関係を構築することで、自然とLTV の向上につながります。
まとめ

こちらの記事では、企業がライブコマースを導入して成功に導くためのポイントをご紹介しました。
ライブコマースは、動画配信とEコマースを組み合わせた販売手法で、リアルタイムで視聴者と双方向のコミュニケーションを取れるのが強みです。
成功のポイントは、視聴者に有益な情報を提供し、定期的に配信すること、SNSやECサイトと連携したマーケティングミックスの活用、AISCEASモデルに沿った購買体験の設計です。
また、自社の強みを活かした企画やコンテンツ作り、視聴者の声への対応、インフルエンサーの起用も重要です。
これらを通じてファン化やリピーター獲得を促し、LTV の向上にもつなげられます。